SOMEDAY 〜 Chapter.11 選択 〜
「ジ、ジニー・・・。」 「あなたも久しぶりね、ハリー?」 「ど・・どうしたの?突然。 連絡もよこさないで・・・。」 「あら。 連絡してからじゃないとマズイ事でもあるの?」 「・・・・。」 何も答えないハリーに、やっぱりね?と言う目を向けたジニーは、 そんな彼を無視して話し続ける。 「ママから手紙が来たの。 ロンからの手紙に、ハーマイオニーもここに来てるって書いてあったって。 ・・・ハリー。知ってて黙ってたの?」 「・・・いや。 ここに来るまで知らなかった。 ・・・って言うか、ハーマイオニーが来てる事と、 君が連絡もなしにここへ飛んでくるのと、 何か関係でもあるのかい?」 久しぶりに会うジニーは、どこか刺々しくて、 私は何か悪いことでもしているような錯覚にとらわれた。 「ジ、ジニー? お茶でも入れるわ。座って?」 気まずい雰囲気を何とかしたくて、 なるべく明るい声でジニーに声を掛ける。 「あら、ご親切にありがとう。」 今までに感じたことの無い悪意が、ジニーから伝わった。 「何だよ、その言い方は! 別にハーマイオニーが何かしたわけじゃないだろう!?」 「ハ・・・、ハリー!」 そんなハリーの態度に、更に気まずい雰囲気が広がっていく。 「そうね。 ここに来てからと言うもの、私に一度も手紙をよこさないのも、 私がこうして突然来たことに動揺するのも、 彼女には全く関係ない事よね? ・・・ところでハーマイオニー?ロンは元気?」 「え?・・・あ、ええ。元気よ、とっても。」 「最近彼はどうしてる?」 「・・・あ・・・、」 「知らないわよね? そうよね。あなただってここに来てからと言うもの、 一度もロンに手紙を書いてないでしょう?」 「どうして・・・、」 「・・・知ってるか? 簡単よ。ママからの手紙に全部書いてあったもの。 今ロンは隠れ穴にいるの。 だからママは、私にもたまには帰って来いって言ってくれたの。 ねえ?どうして手紙を書かないの? 心配してるでしょ?彼だって・・・。」 「ジニー。僕の部屋で話そう。 彼女とロンの事を僕達が色々詮索する必要はないだろう?」 「僕の部屋・・・? 僕の部屋って・・・? じゃあ、どうしてここにいるの?たまたまなの? たまたまここにいる時に、たまたま私が訪ねて来たって言うの?」 「・・・ジニー・・・。」 「私に手紙を書くことも忘れちゃうくらい、 あなたはハーマイオニーといる事が楽しくて仕方が無かったのよ! いつだってこの人は私とあなたの間を裂こうと考えてるんだわ!」 取り乱すジニーが哀れだった。 こんな風に興奮する彼女も始めて見た。 その位、愛してるのね?・・・ハリーのことを・・・。 「いい加減にしないか! ハーマイオニー、ごめん。 今日はこれで失礼するよ。」 「ええ。」 そう言ってハリーは引きずるようにしてジニーを 自分の部屋へと連れて行った。 すれ違いざま、ハリーが一言私に、 「本当にごめん・・・。」 と囁いたのが聞こえた。 別に私達は何も悪いことなんてしてないのに・・・。 ただ一緒に食事をして、話を聞いてもらって、 たったそれだけの事だった。 姉弟なんだし、家族なんだし・・。 どうしてこんな風になっちゃうんだろう・・・。 ふと心の隅にジニーへの怒りが芽生えた気がして、 あわててそれを否定するように首を振った。 その日の夜、隣のハリーの部屋からは ずっと二人の話す声が響いてきていた。 何を話しているかまでは解らなかったけれど、 時々ジニーの怒鳴るような声も聞こえ、 私はしばらく眠ることが出来なかった。 そんな話し声もいつしか聞こえなくなり、 私は心がモヤモヤとした嫌悪感でいっぱいになるのを感じていた。 隣の部屋でハリーがジニーと二人っきりでいると言うことが、 何だかたまらなく嫌だった。 夫婦なんだもの。喧嘩をしても普通に仲直りをして・・・、 そして普通に一つのベッドで眠る。 そんな当たり前のことなのに、それがハリーがしているとなると たまらなく嫌なのだ。 どうして? 今までその存在すら否定しながら生活してきたじゃない。 会いたくてもずっと我慢してきたじゃない。 なのに、どうして・・・? そんな風に私が心の葛藤でモヤモヤしていると・・・、 コンコン。 「ハーマイオニー?寝た?」 ハリーの声が聞こえた。 ハリーのことばかり考えていたから、幻聴まで聞こえるのかしら・・・? 「ねえ?入ってもいい?」 いや、これは幻聴なんかじゃない。 本当にハリーが私の部屋の前にいる。 「ハリー?待って。今開けるわ。」 ベッドの上のガウンを羽織り、急いでドアを開けた。 そこには憔悴しきったハリーが、申し訳なさそうな顔をして立っていたのだ。 「どうしたの、こんな時間に? あ・・・、ジニーは? 寝てるの・・・?」 「ううん。帰った。」 「帰った・・・?」 「そう。明日も仕事だって言ってね。 ねえ、入ってもいい?」 ドアの所で話していたハリーに気付いて、 「当たり前じゃない! さあ、入って。」 「うん・・・。」 時計を見ると深夜2時。 「まったく1人で騒いで、時間が来ればじゃあ、さよなら・・・って。 一体何なんだよ。」 「泊まっていくかと思ったのに・・・。」 「普通ならね。 でも彼女はそうじゃない。 あれだけ一緒にいて、ジェームズの事には何にも触れなかったよ。 ただただ僕と君が一緒にいる事に、我慢ならなかったらしい。」 ハリーの前に、カフェインの入っていないコーヒーを置いた。 疲れ切ったハリーは嬉しそうにそれに口をつける。 「私達が一緒にいなければ・・・、どうだったかしら・・・?」 「おんなじさ。 ホグワーツで君と僕が一緒にいることを聞いて飛んできたんだ。 きっと同じことを言われてるんだと思うよ。」 「ジニーは・・・、なんて・・・?」 急に真顔になったハリーに、押し寄せる気持ちが何なのか、 今の自分には説明できない。 だけど、どこかで素直になりたいと、 そう思う自分がいることだけはわかった。 「ジニーは・・・。 ジニーもジェームズと同じことを言ったよ? 僕が君の事を「好き」なんだって・・・。」 ← Chapter.10 へ → Chapter.12 へ
======== 自分で行けと言っておきながらこれだよ〜。 学生時代の頃から、ジニーはハーマイオニーに対して 劣等感があったと思うんです。 何でも出来て、頭もよくって、何よりハリーの事を 一番良く理解している。 いくらハリーと付き合っても、結婚しても、 そんなハーマイオニーの影は消すことが出来ないんですね〜。 だって深〜〜〜〜いところで二人は結ばれてるんですも〜〜〜ん! ========