SOMEDAY 〜 Chapter.9 隠せない想い〜
もうすぐお昼になるという頃、突然ジェームズが立ち上がった。 そして・・・、 「いっけない!僕これから友達と約束があるんだった。 ごめんね、パパ、ハーマイオニー。 もう、行かなくちゃ。 せっかくハーマイオニーがランチを用意してくれるって言ってたのに・・・。」 え? 今日は一緒にここで、昼食を食べようって約束してたのに。 それに、この状況で私とハリーを2人っきりにしようというの? ちょっとちょっと・・・、それだけは勘弁して・・・? 「ねえ、ランチだけでも一緒に食べましょうよ?」 「ううん、ごめんね。 ちょっと準備もあるし・・・。 ・・・あ、でも2人っきりになるのが・・・ 怖い・・・とか?」 この12歳の少年は一体・・・? 大人の私をからかってるのね? 「馬鹿なこと言わないで。 それ以上私やハリーをからかうと、 本気で減点するわよ?」 そんな私の言葉を本気と受け取っているのかいないのか。 片方の眉毛を上げると悪戯っぽく笑い、 「じゃ、パパ。頑張ってね。」 「何を?」 「わかってるくせに・・・。」 と、ハリーと言葉を交わし出て行ってしまった。 急に2人っきりになって、何を話したらいいのか困っていると、 「ねえ?」 あ・・・、やめて。 心臓に悪すぎる。 私はハリーの声にドキドキしている。 どうしてかしら? ジェームズのせいよね? あんな事言って私をからかって。 いくら親友とはいえ、ドキドキするに決まってるじゃない。 「ハーマイオニー、聞いてる?」 なるべく平静を装ってハリーの方を向く。 「ごめんなさい。なあに?」 「あの・・・。 ジェームズの言ったこと、気にしてないよね? あいついつもそうなんだ。 変にませてるというか、大人をからかうのが好きというか・・・。 気にしないで。 ごめんね?」 ・・・・。 「べ、別に。 何を気にするの?」 「いや・・・。」 歯切れの悪いハリーが気になった。 いつもの冗談なんでしょう? 笑って済ませることなんでしょう? なのに、どうして気にしているの? 「あいつさ・・・。 僕が君の事を好きなんだって・・・・。 ずっと前から思ってるんだ。」 は? ハリーの言っている意味がよくわからなかった。 ずっと前ってどういう事? 私とジェームズは、つい数ヶ月前に初めて会ったのに。 私のことなんて知らなかったんだから。 「からかってるだけよ。 まだ子供じゃない。 まさか、ハリー?本気にしてるの?」 「・・・っていうかさあ・・・。 本気にするも何も、あいつはわかってるんだ。 僕が家であんまり楽しそうじゃないことを・・・。 ここに来て、僕がとっても明るくなったって言われた。 パパが笑顔でいるのを見るのは、久しぶりだって言われたよ。」 「でも・・・。 それと、ジェームズがからかう事と何か関係でもあるの?」 わからないの?と言いたそうな目で私を見るハリー。 又心臓がドキドキいい始める。 せっかく落ち着いてきたっていうのに・・・。 「だからさ〜。 僕が笑顔でいられるのも、幸せそうなのも・・・、 君と一緒にいるからだって。 そう思っているんだよ、ジェームズは。」 まさか! そ・・そりゃ、久しぶりに会えてとっても嬉しかったことは認めるわ。 でも、それとこれとは・・・。 「ね? 頑張っての意味がわかるだろう?」 「・・・・ジェームズは・・・、 それを望んでいるってこと?」 何言ってるんだろう、私は・・・。 「わからない。 でも・・・、 あれ、まんざらからかってるだけじゃない事は本当だよ。」 ”パパの机の上には、あなたの写真が置いてあるんだ・・・・” 前にジェームズに言われた言葉を思い出した。 「ハリー? 一緒にランチを作りましょう?」 「・・・ハーマイオニー・・・?」 急に話題を変えた私の言葉に、 ハリーはビックリしたようだった。 「私ね、お料理がちっとも上手にならないの。 ロンの為に魔法を使わずに一生懸命努力したのよ? でも、いつもいつも叱られてばっかり。 簡単に魔法でやっちゃえば?・・・って言われるの。 自分でもどうして魔法でやろうとしなかったのかわからなかった。 自分はマグルの中で育ってきて、だからそうするのが当たり前だと思ってた。 でもね、ある日気付いたの。 どうして私がここまで手作りに拘るのか・・・。」 「・・・どうして?」 「あなたよ。」 「え?」 「いつも大広間であなたが私のそばで食事をしていた。 とってもおいしそうに、幸せそうに食べてた。 ロンが、自分のママが作る料理の方が美味しいって文句を言っても、 あなたは出される料理に、絶対に文句を言わなかったわ。 初めてのここでの食事の時、糖蜜パイを嬉しそうに食べるあなたが 愛おしくて仕方が無かった。 その時、いつか自分でもお料理が上手になって、 あなたに喜んでもらう日がくればいいって・・・、 そう思っていたのよ。」 「僕は孤児だったから・・・。 ダーズリーの所では飢え死にこそしなかったけど、 愛情のこもった料理は食べたことなかったんだ・・。」 恥ずかしそうに俯くハリーを抱きしめたかった。 でも、今は何かがストップをかけている。 「今はジニーがそれをしてくれているんでしょうけれど、 ・・・お願い、ハリー。 一度だけでいいから、私の夢を叶えさせてくれる? 下手くそだけど、今までのあなたへの感謝と愛情を込めて、 私の手作りのお料理・・・、食べてくれる?」 「ロンに叱られちゃうかも・・・。」 「それを言うなら、私の方こそジニーに叱られちゃうわ。 ・・・でも・・・。」 そして2人で笑った。 「じゃ、せっかくだからリクエストしてもいいかな?」 「ええ! あ、でもあんまり難しいものはだめよ? 私、作れないと思うから。」 「大丈夫。僕も手伝うよ。 一緒に作ろう? ・・・あのね、普通にシチューと・・・。 それからやっぱりこれは外せない。糖蜜パイ。」 「え?それでいいの?」 「うん。一度でいいから、 僕だけの為に作ってくれたシチューが食べたい。」 そこには12歳の子供を持つ父親のハリーはいなかった。 出会った頃の、少し自信なさそうな少年の目をしたハリー。 まるであの頃に戻ってしまったような、そんな錯覚を覚えるほど。 本当にあの頃に戻れたら・・・。 そうしたら私はこの少年に何を言うだろう。 あの頃気付かなかった想いがたくさんありすぎて・・・。 ハリーと立つキッチンで、私は今までに感じた事の無い幸せを感じていた。 そして不思議なことに、ロンに対してもジニーに対しても、 これっぽっちの罪悪感も感じていなかったのだ。 ← Chapter.8 へ → Chapter.10 へ
======== 書いててあやうくこの2人が別々の家庭を持ってるってのを忘れるとこだった。 クリスマスには完結できそうも無いですが、 クライマックス・シーンは25日にUPしたい・・・。 しかし苦しいことに3日連休ですよ〜。(泣) 基本的にハリハーSSですので、ロンやジニーは今後あまり出てきません。 ホグワーツで過ごす二人が本当の2人だということで・・・。 ========