SOMEDAY 〜 Chapter.8 小悪魔の囁き 〜
ハリーに出会えた事で、何かはわからないけれど 私の中で小さな変化が起きていた。 やっと会う事が出来た大切な存在。 いつも心配ばかりしていた放っておけない人。 昔と変わらず私を見詰める目は限りなく優しくて・・・。 それが私の心の中で小さな波紋を作った。 次の日、私とハリーはマクゴナガル先生の所へ理由を聞きに行った。 勿論同じ部屋を割り当てた理由をだ。 「え?そのほうが何かと都合がいいかと思ったんですが…? 親戚同士色々あるでしょう? 無理を承知で来てもらってるんですから、 そのくらいさせてくださいね。」 と、脱力するような応えが返ってきた。 意識し過ぎた自分達がばかみたいで、 溜息をつきながら大広間へと向かった。 「パパ!」 突然の大きな声にビックリして後ろを振り向くと、 そこには、少年の頃のハリーが立っていた。 ううん・・・。 少年の頃のハリーにそっくりなジェームズだった。 「こら。 ここではパパじゃないだろ?」 私には見たことも無い父親の顔をしたハリーがそこにいた。 子供のいない私にはわからない、絶対的な信頼感。 そんな空気を感じて、慌てて下を向く。 「あ・・・、 もしかして・・・、ハーマイオニー・・・?」 そんな私を不思議がることもせずに、 ジェームズは話しかけてきた。 「そ・・そうよ?ジェームズね? はじめまして。 私はハーマイオニー・グ・・・ じゃなかった、ウィーズリー。 よろしくね?」 「うん。僕、ジェームズ・ポッター。 あなたとは会ったことはないけれど、 僕、よく知ってるよ?」 そう言って笑顔で握手を求めてくる。 ハリーとそっくりなこの少年は、 当然のことだけど眼鏡は掛けていない。 背もあの頃のハリーより少し大きい感じがした。 そして・・・、その顔にはジニーとそっくりな淡いそばかす・・・。 当たり前だ。 この子はハリーと・・・、ジニーの子供なんだもの。 そんな私の感慨をよそに、屈託なくジェームズは話し出す。 「父さんの机の上にはあなたの写真が置いてあるんだ。 随分前の写真みたいだったけど、 ちっとも変わってないって事だよね? だって、とっても若くて綺麗なんだもん!」 「・・・!? おい、ジェームズ! 余計なことを言うんじゃない!」 「あら、ありがと。 でも気をつけてね? あなたのパパはあなたからも減点出来る、 ここの先生なんだから。」 「別にいいでしょ?本当のことなんだから。 それに僕はパパとハーマイオニーの弱みを知ってるんだ。 減点は得策じゃないと思うけどな。」 そう言うと私にウィンクしてくる。 そして、「じゃ、またね?」と言うと、自分の席まで 走っていってしまった。 後に取り残された私とハリーは小さくため息をつく。 「私達の弱みって・・・・、なにかしら?」 「・・・・さ、さあ。」 「やっぱりあなたの子供だわ。」 「・・・・。」 「そしてウィーズリーの血もしっかり受け継いでるわね? フレッドとジョージとは特別気が合いそうじゃない?」 **************************************************** 本格的に授業がスタートし、慌しい毎日が過ぎていく頃、 私は自分がいかにこの仕事に向いているかを実感していた。 天職かと思えるほど、毎日が充実している。 そしてハリーは飛行術の教師だったせいか、 教える生徒はほとんどが1年生の子で、 自分の息子と授業で顔を合わせることがないと言って 心底ホッとしていた。 そんな私はほぼ毎日ジェームズと顔を合わせていた。 とっても優しい子で、授業が終わると必ず私の所に来て、 声を掛けてくれる。 私はジェームズの事が自分の子供のように思え、大好きになった。 休日は私かハリーの部屋で、よく3人で過ごしていた。 何をするわけでもなく、ただジェームズの勉強を見てあげたり、 簡単な部屋の模様替えをしたり・・・。 そんなある日の休日。 いつものように3人、私の部屋で過ごしていた。 「ねえ、ハーマイオニー? ロンおじさんってどんな人?」 休日にジェームズは私のことをハーマイオニーと呼ぶ。 それを私もハリーも許していた。 「ロン? そうか・・・。ジェームズは会ったことがなかったわね?」 「うん。へんだよね、親戚なのに。 ママのお兄さんなんでしょ?」 「そうよ。 でも、あなたのママとは違って、がさつで無神経な人。」 すると、暖炉の前で箒の手入れをしていたハリーが笑いながら、 「ちょっと、ハーマイオニー。 それはちょっと酷くない? せめて大らかでさっぱりした性格の人って言ってやりなよ。」 とフォローする。 だけど、そんな風に言えない自分に気がついた。 「だって、本当のことだもの。 特に私の前ではね。」 「どうしてそんな人と結婚したの? ロンおじさんとハーマイオニーと、そしてパパの3人は 親友同士だったんでしょ? どうしてパパじゃだめだったの?」 「おい!ジェームズ!」 「あら・・・、だって・・・。 あなたのパパには・・・。 あなたのお母さんって言う恋人がいたんだもの。 その前にはチョウっていう子とも付き合ってたわね。 とっても綺麗な子で・・・。 ハリーは面食いなのよ。 だから私には見向きもしなかったってわけ。」 「違うよ! ハーマイオニーはとっても綺麗だし、優しいよ!」 「うふふ・・・。ありがと、ジェームズ。 私、もう少し結婚を後にすればよかったかしら? そうすれば、あなたと言う素敵な王子様が現れてくれたもの。」 「ほんと? ほんと?ハーマイオニー?」 「ええ!ほんとよ?」 「じゃあさ、ロンおじさんと別れてよ。 で、僕と結婚しよ?」 冗談ともつかない真剣な眼差しで、少年は私の手をとった。 「ねえ、ハーマイオニー。 僕と結婚しよう?」 まっすぐ見つめてくる真剣な瞳。 ハリーとそっくりな顔で、声で、私に問いかける。 泣き出しそうな気持ちを必死で抑えている自分がいた。 親子ほど歳の離れている少年の言葉に、今自分は酷く動揺している。 まるでハリーに言われているような錯覚に囚われてしまった。 黙ってジェームズを見つめていると、彼がクスッと笑った。 「ねえ? 今、僕のパパに言われてるみたいだった?」 「・・・え?」 「だから! ハリー・ポッターにプロポーズされてるみたいだった?」 ・・・・やられた。 「もう!知らないっ! ジェームズのばかっ!!」 後ろでジェームズが何かをハリーに囁いて頭を叩かれていた。 私は不覚にも真っ赤になる顔を両手で押さえ、彼らに背を向ける。 「パパ?図星だったみたい・・・。」 そんな風に聞こえたような気もしたけれど・・・。 いつもの休日の他愛ない冗談で、 こんなに動揺したのは初めてだった。 そして、自分の心の中の波紋が又一つ大きくなるのを 気付かないわけにはいかなかった・・・。 ← Chapter.7 へ → Chapter.9 へ
======== はたしてこのジェームズ。 2人にとって天使となるのか悪魔となるのか・・・? 秘密の部屋の頃のハリーに、真剣な顔でプロポーズされたら、 ハーじゃなくたって動揺しますがな。 消えちゃった前の文章とかなり違ってる気がします。 もう少しやり取りは長めだったんですが、思い出せない・・・。 きちんとメモしてから書かなきゃだめですかねえ? 第9話、間を空けず明日にはUPしたいと思います。 ========