SOMEDAY 〜 Chapter.6     新しい生活 〜

「いくら血が繋がってないとはいえ、 姉弟の再会にしては刺激的すぎやしないか?」 自分達の世界に浸っていた僕たちに、 突然現実に引き戻すかのような言葉が聞こえた。 「あ・・、 ご、ごめん・・・。」 そういって僕たちはお互い真っ赤になって抱き合う手を放した。 「マルフォイ、あなたどうしてここに?」 「僕たち3人がどうやら臨時の教師だと言うことらしいな。」 「え?じゃあハリーも?」 僕は答えるかわりに笑顔で頷いた。 咄嗟に出た行動とはいえ、 かなり恥ずかしい事をしてしまった自覚があったからだ。 しかもマルフォイの目の前で…。 「まあ、僕で良かったと思うんだな。 君達の事に関しては、 それが不倫であっても理解は出来るつもりだから。」 「不倫って何だよ! 僕たちは別に・・・そんな・・・。」 「そうよ、マルフォイ! 変な事言わないで! 私はただハリーと会うのが  とっても久しぶりだったから・・・、」 「嬉しくてついキスしてしまった・・・、か?」 そう言うとマルフォイは僕たちのバックをそれぞれに投げてよこした。 「気にするな。冗談さ。 さ、行くとするか? 僕も腹が減ってきた。」 僕はハーマイオニーのバックを、 黙って彼女から取り上げると軽くウィンクをした。 彼女は嬉しそうにはにかんだように微笑む。 そして3人で迎えに来ていた馬車へと乗り込んだ。 *********************************************** ホグワーツに着くと、今では校長職に就いている マクゴナガル先生が笑顔で迎えてくれた。 随分と歳をとってはいたが、あの頃の様に厳格な雰囲気はそのままだ。 だけど僕たちが職員として働く事を、 快く受け入れてくれたと言ってとっても喜んでいた。 そして僕はなんと飛行術の教師兼、クィディッチのコーチに任命された。 マルフォイは薬草学、ハーマイオニーは呪文学だった。 僕の得意教科は防衛術だったけれど、 今となってはそれもあまり必要ないのかもしれない。 飛行術は僕にとって、本当に嬉しい任命だった。 結婚してからフルーパウダーに頼りっぱなしで、 ほとんど箒に乗ったことがなかったし、 マグルの町に住む僕にとっては、 箒はなかなか乗ることが出来ない代物だったからだ。 おまけにここでは大好きなクィディッチまで出来る。 「おい、嬉しいのは解るが、その締まりの無い顔は  どうにかできないのか・・・?」 そりゃ無理な相談ってもんだよ、マルフォイ。 「そんなに締まりの無い顔をしてるかなあ・・・?」 「してる、してる。  だらしの無いことこの上ない。」 「マルフォイは箒は久しぶりじゃないの?」 「僕か?・・・・ああ、そういえば乗ってなかったかもなぁ・・・。  なんだ?そんな理由でニヤついてたのか?」 「当たり前だろ?他に何があるっていうのさ?  おまけにクィディッチのコーチだよ?  生きててよかった〜って気になるね。」 「大袈裟な。  僕はてっきりグレンジャーと一緒で嬉しいのかと思ったが・・・?」 あ・・・。 それも当たってるかもしれない・・・。 「そりゃ嬉しいよ。  本当に久しぶりなんだ。  彼女ちっとも変わってなかったと思わない?」 「お前と同じ顔してた。」 「・・・え?」 「お世辞にも幸せでしょうがないって顔はしてなかったってことさ。」 「・・・・。」 「なんだ、気が付かなかったのか?」 「ごめん・・・。」 「僕に謝ることはない。  これからじっくり時間を掛けて聞いてやるんだな。  ほら、君の部屋の前で待ってるぞ。  愛しの姉さんが・・・。」 前を見ると僕に当てあわれた部屋の前で、 ハーマイオニーが困ったような顔をして立っていた。 「じゃ、僕はこっちだから失礼するよ。  ま、明日から宜しくな。  せいぜい僕を楽しませてくれよ?ポッター。」 そう言うとマルフォイは地下室の廊下へ続く階段を下りていった。 「どうしたの?ハーマイオニー。」 「あ、ハリー・・・。」 「まさかホグワーツで迷子になったわけじゃないよね?」 軽く睨みつけるその様子も、学生の頃とちっとも変わっていない。 僕にとって彼女は昔のままの彼女だった。 マルフォイの言う様な変化は、微塵も感じられない。 「ここ・・・、ハリーの部屋よね?」 「うん、多分。  マクゴナガルからはそう言われてるけど?」 「じゃあ、ここは私の部屋でもあるのよ・・・。」 「え?」 「合言葉を教えて?  合言葉はあなたしか聞いてないでしょう?」 「え?ど・・・どういうこと・・?」 いいから早くと急かされて、僕はさっき言われた合言葉を唱えた。 「シュガークィレル!」 中に入るとそこは呪文学の教室だった。 ハーマイオニーは呪文学の教師になったわけだから、 当然この奥に自分の個室があるわけだ。 え?じゃあ、ここは僕の部屋じゃなくて彼女の部屋じゃないか・・・? 「ごめん、ハーマイオニー。  ここは君の部屋のようだ。  僕はもう一度マクゴナガルに確認に行って来るよ。」 「違うの、ハリー。  ここは私と・・・、そしてあなたの部屋でもあるのよ?」 「まさか!何かの間違いだろ?」 「だって・・・・。  あなたと私は・・・、今は姉弟だもの・・・。」 おいおい。 これだけ広いホグワーツなのに、何で姉弟だからって 同じ部屋を使わなきゃいけないんだ? それに僕と彼女は義理の姉弟であって、 実際はあかの他人なんだ。 まずいだろ・・・、さすがにこれは・・・。 そんな僕の動揺をよそに、ハーマイオニーは個室へと続く 階段を上っていった。 「きっと魔法で二部屋用意してくれてあるはずよ、ハリー。  一緒に確認しましょう?」 「う・・・うん。」 階段を少し上ると、教室からは見えない場所にドアが二つあった。 「ほら!大丈夫よ。二つあるわ。」 「でもさ・・・。  僕は飛行術の教師だろ?  呪文学の教室から自分の部屋に行く必要は  無いと思うんだけど・・・。」 それもそうね・・・と彼女も不安そうだ。 だけど今夜はもう遅いので、又明日確認しようと決め 僕らはそれぞれの扉からそれぞれの部屋へと入ってみた。 うん、多分こっちが僕用に用意してくれた部屋なんだろう。 家具もカーテンも全てがシンプルで、女性が使うにはちょっと殺風景だ。 荷物をデスクの横に置き、用意されていたクローゼットの中に いくつかのマントや、ジャケットをしまう。 奥にはミニキッチンが設えてあり、その隣はバスルームとトイレ。 初めて知った教師の使う部屋に、僕は興味津々だった。 マルフォイの使う部屋もこんな感じなのかな・・・? 明日見に行ってみよう。 家から持ってきた、いつも使っているタオルケットを出し、 ベッドメーキングを済ませるとシャワーを浴びる準備をした。 シャワールームの扉を開けようとしたまさにその時、 僕の部屋の扉がノックされた。 「・・・ハリー?入っても?」         ← Chapter.5 へ           → Chapter.7 へ


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遠く離れた部屋同士にしようと思ったんですが、
この方がイチャイチャするには都合がいいので・・・。(笑)
マクゴナガル先生の粋な計らいで、2人にとっては楽しく幸せな
ホグワーツ生活がスタートしましたvv

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