His Birthday 8
ハリーから声が掛かったのは、誕生日の前日・・・、 つまり7月30日の午後だった。 誕生日は明日でしょ?と言う私にいいからいいからと言って、 ハリーは私を三本の箒に呼び出した。 「ハリー!お待たせ。随分待った?」 「いや、それよりごめんね? 一日早く呼び出したりして。」 「ううん、大丈夫よ? でもどうして今日なの?」 私はハリーと二人でこうして過ごす事が嬉しくて仕方がないくせに、 敢えてそんな事を口にした。 「明日が誕生日だから…、今日会いたかったんだ。」 「え?どういう意味?」 ま、いいじゃないかとハリーは笑った。 そうよね?一日早いくらいどうって事ないわ。 明日の本当の誕生日には、もしかしたら…、 ジニーと約束があるかもしれないもの。 自分の考えに少し傷つきながら、 今はそんな事は考えないでおこうと首を振った。 「じゃ、何処へ行きましょうか?  ハリーの誕生日なんだから、何処にだって付き合っちゃうわよ?」 こんな機会はもうないかもしれないと思い、 どうせならおもいっきり楽しもうと考えた。 ハリーの行きたい所。 恋人としてじゃなく、親友として楽しめる所。 するとハリーは、 「じゃあね…、まず僕の箒に乗ってくれる?  少し飛びたいんだ。」 「ええ!いいわよ。」 こうしてハリーとの初めてのデートを楽しんだ。 叫びの屋敷、湖の回り、少し怖かったけれど禁じられた森の入り口。 ハリーの箒の後ろに乗って、ありとあらゆる所を回った。 そのどれもが一度はハリーと来た事があった場所なので、 二人でその時の事を思い出しては、笑ったり緊張したり・・・。 こうしてみると、いかに私はハリーと過ごしている時間が長いのか、 本当によくわかる。 それは決して楽しい時ばかりじゃなかったけれど、 ホグワーツでの6年間はハリー抜きでは考えられない。 同じ親友のロンと過ごす時間の何倍も、ハリーと二人で居る事が多いのだ。 今までそんな事を考えた事のなかった私は、 「これじゃ、ハリーを好きになって当たり前よね・・・。」と、 つい口に出して呟いていた。 「え?なに?今何か言った?」 「・・・!ううん、なんでもないわ・・・。  か、風が気持ちいいなあ・・・って。」 慌てて口ごもる私を、横目でチラッと見たハリーは 「なんだかなあ・・・。」と言ってクスリと笑った。 時間はあっという間に過ぎてゆく。 そろそろ辺りも薄暗くなり、一日の終わりを告げようとしていた。 「ねぇ、ハーマイオニー?  最後にもう一カ所だけ付き合って欲しい所があるんだけど。」 ハリーとの時間を終わりにしたくなくて、 私は喜んでその提案を受け入れた。 「なあに?今度は何処に連れて行ってくれるの?」 「何処に行くか・・・、聞きたい?」 「え?えぇ。」 「・・・。  いいから黙って着いてきてよ。」 そう言うとハリーは私の手を握り、今度は箒の前に座らせた。 「ハリー?」 「軽蔑しないで。  これから僕のしようとすることを・・・。」 俯いたままそういうと、ハリーは私を強く抱きしめて地面を強く蹴った。 遠くにホグワーツの明かりが見える・・・。 後ろから抱きしめられる形の私は、 嬉しいやら恥ずかしいやらで何も話す事が出来なかった。 ハリーの息が耳元を掠めて、身体の中心が熱くなるのを感じていた。 しばらくするとさっきまで二人でいたホグズミートを眼下に見下ろし 一軒の古びたパブの前に降り立った。 「ハリー?ここは?」 「うん・・・。ここ、2階が宿になってるんだ。  今夜は君とここに泊まりたいと思って・・・。」 一瞬自分の耳を疑った。 ハリーが私と此処に・・・、泊まりたい? 「え?ど、どういう事?」 「いや、どういう事って・・・。」 ハリーは恥ずかしそうに下を向いていたけれど、 覚悟を決めたように、私の顔をしっかりと見据えこう言った。 「君の事が好きなんだ。  だから明日の誕生日が来るまで、一緒に居てほしいんだ。  無理にとは言わない。  僕はこれからこのパブの2階にある部屋に先に行ってる。  だから君はよく考えて、嫌ならこの箒を使って一人で帰ってくれ。  でももし僕と一緒に過ごしてもいいと思ったら・・・、  後から部屋に・・・来てほしい。」 そういうとハリーは私に背を向けてパブの中へ入って行こうとした。 だけど私の気持ちはもう決まっていたの。 後から行くなんて嫌。 少しの時間も離れていたくない。 ずっとずっとハリーと一緒に居たかった。 気が付くと離れていく背中に夢中でしがみついていた。 「一分だって、一秒だってあなたと離れていたくないわ。  今までもそうだったように・・・。  そんな私の気持ちは解ってくれないの?  こんな所に一人で置いていかないで。」 「ハーマイオニー!」 驚いて私を見詰めるハリーに、私はそっと囁いた。 「それに私、まだ貴方に誕生日プレゼントをあげてないわ・・・。」  
軌道修正しながらも、ここはどうしても入れたかったシーンです。
思い出を振り返ってみると、あ、ここは彼と行った・・・。あ、ここもだ。
って事あるじゃないですか?
1〜6巻まではいつも2人は一緒でした。危険な冒険は勿論の事、
談話室での宿題だっていつも一緒。
まあ、私たちハリハーもんが再確認するほどの事じゃないですけどねvv
次回はいよいよ最終回!!・・・の予定。