「われ、ここに誓う・・・。 われ、よからぬ事を企む者なり・・・。」 双子に教えて貰った呪文を小さく唱えた。 すると古ぼけたただの羊皮紙に、みるみる地図が現れる。 「ハーマイオニー・・・、ハーマイオニー・グレンジャー・・・と。」 この時間は夕食も済み、それぞれが好きな事をしている時間。 いつもなら大抵僕達と談話室で宿題をしているか、図書室で調べ物をしている彼女。 だけど、今夜はそのどちらにも彼女はいなかった。 そうだよなあ・・・。 いつも僕がいそうな所にいるわけないか・・・。 彼女は僕を避けているんだった。 しばらく "忍びの地図" で彼女の名前を探していたが、 どういうわけか、ちっとも見つからない。 女子寮の自分の部屋にもいないし、ハグリッドの小屋にもいないようだ。 地図の中でも僕を避けているんじゃないかと思うくらい、 いくら探してもハーマイオニー・グレンジャーの名前は見つからなかった。 「おっかしいなあ・・・。」 僕は一旦あきらめて、ベッドの上に仰向けに寝転んだ。 だけど・・・、 あの時彼女は何を考えていたんだろう? 大好きな本もそっちのけで、物思いに耽っていた。 開心術で見た光景はみな僕が出てくるものだった。 そういえば、僕が始めてスネイプから開心術を受けた時、 ポリジュースで失敗した黒猫のハーマイオニーを見たっけ・・・。 あとはダドリーに苛められるところとか・・・。 あんまり思い出したくないものばかりだった。 きっと心の奥深いところで、自分でも忘れていたような嫌な思い出が ずっと根強く残っているんだろう・・・。 だからハーマイオニーの見たものは、きっと 強烈に残っている嫌な思い出だったんだ。 そうだよなあ。 僕と居るといつもいつも危険な事ばかりに遭遇してしまう。 「ろくな親友じゃないよなあ・・・。」 ため息と一緒に、口に出して呟いていた。 "・・・・あなたは馬鹿よ・・・。" ふとそんな彼女の声が聞こえたような気がして、 僕はびっくりして飛び起きた。 空耳か・・・。 びっくりした。 いつまでもうじうじしてるから、そんな幻聴まで聞こえてしまうんだ。 目を瞑ると、あの時の彼女の表情が目に浮かんでくる・・・。 以外にも可愛いと感じてしまった、彼女の横顔。 すると何となく彼女の香りまで感じたような気がして、 僕はそのまま眠りについてしまった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 次の日の朝、大広間に向かう途中でロンが聞いてきた。 「ハリー、ハーマイオニーは見つけられたかい?」 「いや、昨日は全然どこにいるのか解らなかったよ。 君、心当たりはないの?」 「彼女の居る場所っていえば、 図書室か・・・、図書室か・・・、図書室だろ?」 「真っ先に探したよ。 ハグリッドの所も、マダム・ポンフリーの所も。 監督生のお風呂場にもいなかったし、女子寮の彼女の部屋にもいなかった。 今朝見てみたら、ちゃんと自分の部屋にいたけどね。」 「ふ〜ん。どこに行ってたんだろ? あ、直接きいてみろよ。 お〜い!ハーマイオニー!」 僕の背中越しにロンが手を振った。 振り向くとハーマイオニーが歩いてくる。 一晩姿を見なかっただけで、 なぜかとても久しぶりに彼女を見たような気がした。 僕は軽く微笑んで彼女におはようの挨拶をしようと口を開いた。 「おはよう、ハーマイ・・・」 すると僕の言葉を最後まで聞かずに、僕の横を猛ダッシュで 走り抜けて行ってしまった。 「こりゃ、前途多難だよな、ハリー?」 こうなりゃ、今夜は絶対に彼女を見つけ出して謝ろう・・。 そう決心した今日の授業はいつもの何倍も長く感じられた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「一体どこにいるんだよ!?」 昨夜と同様必死に彼女を見つけようとしたけれど、 どうしたって彼女の名前だけが見つけられない。 他寮の談話室までくまなく探したが、どこにもいないようだった。 「おかしいなあ? 彼女には、この地図からも姿を消す魔法が使えるんじゃないのか?」 苛々する僕に又彼女の声が聞こえた。 ”あなたはやっぱり・・・馬鹿だわ・・・” 「はいはい、どうせ馬鹿ですよ! 親友を傷つけて、謝らせてももらえない大馬鹿だよっ!!」 ただの空耳に返事を返して、ますます僕は苛立っていた。 「頼むから出てきてよ・・・、ハーマイオニー・・・。」 かなり情けない声でそう呟く。 その時僕の想像もつかない様な場所で、 彼女の名前がある人物の名前の傍で浮かんでいたなんて まったく気付きもしなかったんだ・・・。 ← →
His Birthday 4 ![]()
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ハーちゃん、どこ行ったんだろ?
ハリーはもう、仕返しどころじゃありません。
頭ん中はハーマイオニーで一杯で、
声は聞こえるわ、匂いも感じるわで大騒ぎ・・・。
人間って、匂いの記憶って結構鋭いんですってね。
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