[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。





SOMEDAY ~ Chapter.20    	Harry and Hermione ~

クリスマス休暇も間近に迫り、校内の雰囲気も浮足立ってきた。 其処此処で休暇の予定を話す生徒たちがいた。 ジェームズにはジニーから手紙が届き、 クリスマスは隠れ穴へ帰ってくるようにと連絡があったらしい。 こっそりジェームズは僕に教えてくれたけど、 本当は内緒にしておくように釘を刺されたと言っていた。 まだ彼女は、僕に会う心の準備は出来ていないようだ。 だから指輪を返されただけで、僕とジニーはまだ夫婦のままだった。 「このまま連絡がつかなければ、お前たちはずっと夫婦って事か?」 いつも相談に乗って貰っていたマルフォイにまで心配された。 「案外それが目的なんじゃないのか?」 「まさか・・・。  指輪だって返してもらったし・・・。」 「女はわからないぞ。  そうやって中途半端な形でも、お前を渡したくないって考えてるかもしれない。  手段としては汚いが、なかなかの策士だと思うよ。」 「気が重くなること言うなよ、マルフォイ。  気持ちが離れてる以上、そんな事無意味だろう?」 「だからお前は甘いって言われるんだ。  形の上だけでも縛り付けておきたいんだよ。  ところでグレンジャーの様子はどうだ?  そんなお前に愛想をつかしてるんじゃないか?  いつまでも待ってはくれないだろう・・・。」 「・・・・。」 そりゃ彼女のためにも早くケジメをつけたいさ。 ケジメをつけて、二人で一からやりなおしたい。 「僕なら早々に見切りをつけるがな。  今一番大切なのは何なのか、よく考えることだ。  じゃないと全て失うことになるぞ?」 「わかってるよ・・・。」 鋭いところをつかれて、一気に気が滅入る。 だけどマルフォイの言うことは正しい。 今まで散々待たせて、その上いつまでもこのままじゃ・・・、 ハーマイオニーにだって我慢の限界はある。 ****************************************************** クリスマス休暇に入って、生徒たちのほとんどが自宅へ帰って行った。 教師もほとんどいなくなり、城に残ったのは僕とハーマイオニー、 そしてフィルチとハグリッドだけになった。 ・・・だけど・・・、 「さて、僕たちもそろそろ行こうか。」 「ええ。」 実はこの休暇を利用して僕とハーマイオニーは 二人きりで旅行へ出掛けることにしていた。 場所はゴドリックの谷。 僕と両親がほんのわずかな時間、過ごしていたあの村だ。 僕達にはここに来る目的があった。 ホグワーツの臨時職員の任期が終了したら、 ここで暮らしたいと考えていた。 だからそれまでに、二人で暮らす家を探そうと思っていたのだ。 「ハリー?  さっき見た家に決めましょうよ。  小ぢんまりとしていて、清潔そうで・・・。  何より、あなたのご両親のお墓に近いことが気に入ったわ。」 「でも、いいの?  僕の希望ばかりを優先させてしまって・・・。」 「あなたが満足なら私も満足なの。」 「・・・・。  ありがとう・・・。」 そう言うと彼女はほんのりと頬を染めた。 「ハリー?」 「ん?」 「ハ・リ・-?」 「なんだよ、変な呼び方して。」 「私・・・、とっても幸せよ・・・。」 「え?」 「友達としてじゃなく、あなたのパートナーとして  ”ハリー”って呼べることが・・・。」 「・・・・ハーマイオニー・・・。」 「私を見つめてくれるあなたの目がとっても優しくて  いつも夢じゃないかしら・・・って思うの。  今まで何百回も何千回もあなたの名前を呼んで、  そんな私の声にあなたは振り向いて私を見てくれた。  その時の目にもドキドキしてたけど・・・、  今はもっと・・・、こう・・・、  胸がキュンってなるの。」 「僕の眼なんて、散々見慣れてるのに?」 「・・・ええ。」 「じゃあ・・・。  ほおら、これでどうだ。  もっとドキドキしちゃう・・・?」 僕はふざけて彼女の顔を両手ではさみ、 自分の顔を近づけてジッと彼女の眼を覗き込んだ。 めいいっぱいの想いを込めて。 「どう?  ドキドキしてきた?」 「・・・・。」 彼女は真っ赤になって一言も発せない。 まったく・・・。 かわいいよなあ。 「ねえ?」 「・・・。」 「君も・・・、ハリーって、呼んで?」 「・・・・。」 「ねえ、ハーマイオニー?聞いてる?」 「だめ・・・、ハリー。  私倒れそう・・・。」 トロンとした表情で力が抜けていく彼女を慌てて抱き抱え、 僕は苦笑した。 「ちょっと、大丈夫?どうしたんだよ?」 「私、今までよく耐えられたものだわ・・・。  自分で自分を褒めたい気分よ。」 「フレッドやジョージのずる休みグッズより効果的だったね?」 「少なくとも私にはね・・・?」 近くで名前を呼べて、そして見つめあえる。 愛し合う者同志の特権だ。 今までの様に、親友としてのやり取りとは全く違う。 それは二人で実感していた。 「ハリー?」 「ん?」 「お願い。あせらないでね・・・?」 「何を?」 「ジニーとのこと。」 「ハーマイオニー・・・。」 「私は大丈夫だから。  もしこのままずっとこんな状態が続いても、  あなたへの気持は変わらないし、  あなたの気持が変わらないことも知っている。  形じゃないわ。  だからずっとこのままでも大丈夫。」 「ごめんね。僕が不甲斐ないから・・・。  君に辛い思いをさせてる・・・。」 「だから・・・。そうじゃない!  辛いことなんて何もないわ。  お願いだからゆっくり時間をかけてほしいの。  信じてるから・・・、ね?あせらないで?」 「わかった。  今度は絶対に後悔しないように・・・、  決して失敗しないように、  君のために頑張るから。」 そして僕たちは、僕の両親の墓に近い、小さな家を買った。 ここで彼女との生活を始める。 ジニーと13年暮らしていたアパートメントとは違い、 素朴で木の香りのする温かい家だ。 どことなくハグリッドの家と似ている。 二人で煉瓦の欠片に自分たちの名前を魔法で刻み、 家の表札を作った。 いつか、みんなに認められる日が来たら これを家の玄関の扉に飾ろうと約束をして。 入居がすぐに許可されたので、予約していたホテルをキャンセルして 早速僕たちはその家へと向かった。 「ハーマイオニー?  まだ時間があるからロンドンに出て買い物をしよう。  いつでも帰ってこられるように、簡単に家のものを揃えようよ。」 「ほんとっ?  ハリー、疲れてない?」 こんな時まで僕の心配をしてくれる。 だけどとっても嬉しそうな彼女の顔。 「ぜんぜん!  君の方こそ嫌じゃなかったらだけど・・・?」 「嫌なわけないじゃない!!」 二人でする買物は久しぶりだった。 学生の頃はしょっちゅう本屋へ引きずられて行ったけど。 こうして買い物をしていると、不思議なくらい二人の趣味が一致していて トントン拍子に買い物が進んでいく。 「カーテンはあなたの目と同じグリーンがいいわ。  これだけは譲らないわよ?」 「どうして?  普通にアイボリーか何かにしようよ。」 順調な買い物の中で唯一揉めたのがカーテンの色だった。 彼女は絶対にグリーンにすると言って譲らない。 「だめよ。  薄い色でいいの。絶対にグリーンだわ。」 「どうしてそんなにグリーンにこだわるのさ?」 「だって・・・。」 いつもはっきり物を言う彼女がどうもはっきりとしない。 もじもじと目を泳がせて、なにやらブツブツと口ごもるきりだ。 「ハーマイオニー?」 「だって・・・。  あなたが仕事で出かけている時も、  グリーンのカーテンがあるだけで  あなたと一緒にいるような気がすると思って・・・。」 「・・・それが・・・、理由?」 「私の身の回りのものはみーんなグリーンなのよ?  気がついたら学生の頃からずっとそうだった。  安心するの。  この色に囲まれていると・・・。」 それを聞いて僕は何とも言えない気持ちになる。 「そんなに僕のことが・・・、好き?」 「・・・・。」 「ねえ?  僕のことが好き?」 「・・・いけない?」 「・・・もう・・・・。  たまらないよ、ハーマイオニー。  わかった。  グリーンにしよう。」 「本当?いいのね?」 「ああ。」 「ああ!ありがとう、ハリー!」 そこで僕はあることを思いついた。 今まで離れていた分、いつも一緒にいられるように やっぱりあれは彼女に渡すべきだ。 必要な時に、必要な人に・・・。 新居に帰って僕はシリウスのくれた両面鏡を、ハーマイオニーに手渡した。 「これがあればいつでもお互いの顔が見れる。  電話みたいに声だけじゃなくて。」 「私が持っていていいの・・・?」 「君が持ってなくてどうするの?  僕が仕事に行ってる間、寂しくて仕方がないんだろ?」 「いじわるね・・・、ハリーは。」 新しく買ったベッドに入りながら、シーツに包まる彼女は 僕を優しく睨みながら拗ねたふりをする。 「じゃあ、あなたの浮気防止に持っていてあげるわ。」 「えー?僕が浮気するなんて思ってるの?  ひどいなあ・・・。」 「あなたにその気がなくたって、近寄ってくる女の人はたくさんいると思うわ。  6年生の時のあなた、すごくもててたじゃない。」 「あれ?  ヤキモチ妬いてくれてたの?」 すると彼女は僕の胸に顔を埋めて、 「もうあんな思いはイヤ。  絶対にイヤよ?」 「じゃあ僕も同じだ。  君に言い寄ってくる男がいないように、これで監視してなくちゃね?」 「私は大丈夫よ!」 「知らないのは本人だけだね?  ダンスパーティーから君、すっごく人気があったんだよ?  ただの親友だったけど、めちゃくちゃ気分悪かった。」 「あなたもやきもちね?」 僕はふざけて彼女の声色を真似、 「もうあんな思いは・・・絶対いやよ?」 と耳元で囁いた。 「ばかっ!」 「ハハハハ!  でも・・・、君をもう誰にもとられたくないよ。」 「大丈夫。私はあなただけのものだから。」 「うん。僕も君だけのものだ。」 そして強く彼女を抱きしめた。 このままずっと・・・、いつまでもいつまでも この幸せが続けばいい。 他愛ない冗談に笑いながら、時には喧嘩をしながら、 それでも僕は彼女を愛するだろう。 ジニーからはもちろん手紙は来ていない。 今頃隠れ穴でジェームズやロンと クリスマスの準備で楽しく過ごしているだろう。 たった紙切れ一枚だけど、それを貰うまでは 僕とハーマイオニーは正式な夫婦にはなれない。 それがとても歯痒かった。 ハーマイオニーは慌てるなと言うけれど、 僕としては早くケジメをつけたかった。 そんな僕をハーマイオニーは優しくたしなめた。 形としての夫婦を望んでるわけじゃない、 だから大丈夫だと言ってくれた。 クリスマスの朝、僕はハーマイオニーと教会へ出掛けた。 正式な夫婦になれなくても、せめて誓いを立てようと言って。   そこで誓い合った僕たちの愛はきっと永遠に続くはずだ。 見えない力に翻弄されて、お互い別々の道を歩いてきたけれど、 そんな力など及ばない僕たちの絆が、本来あるべき姿へと導いてくれた。 「誰からも祝福はないけど・・・、いいよね?」 「平気よ?  必要なのは私とあなたの気持ちだけだもの。」 「後悔してない?」 「してないわ。」 「一生、愛していくから。」 「私もよ、ハリー・・・。」 二人が本当の意味で結ばれるのは、まだまだ先の事になるだろう。 だけどそれは僕らに与えられた試練だ。 それも彼女と一緒なら容易に乗り越えていける。 だから・・・。 いつかきっと・・・。 新しい家の扉に、二人で作った表札が飾られる日が来るまで、 大切に愛を育んでいこう。 必ず訪れるはず。 SOME DAY・・・                                               END(完)        ← Chapter.19 へ           


========

入れたかったエピを無理やり押し込んだせいで
取り留めもない最終回になってしまいました。

この中途半端な終わり方は、第2部へ続かせるためです。
ジニーの手紙が来ないのも、ロンやマルフォイのその後が語られてないのも。

文中にある見えない力に翻弄されて~と言う件は
言うまでもありません、原作に対してです。
6巻で終了した場合、ロンハー、ハリジニは決定的ですもん。

そんなの許せないんだから!

途中どんな遍歴があっても、最後はハリハーだよ!と叫びたかった、
くうのわがまま連載、読んでくださってありがとうございました!

========