House 3-1 |
「おまたせ」
「ハリー!」 「待った?」 「少しだけね。でも10分くらいよ」 「ごめんごめん。出がけに上司に捕まった。・・・で?食事にする?それとも飲みに行こうか」 ハーマイオニーとキスをした夜から2週間が経った。 あの日から僕は、以前のように仕事に夢中になる様にしていた。 自宅へ帰る時間も深夜0時を過ぎてから。さすがにそんな遅くまで彼女は待っていないだろう。 もし、来ていればの話だけれど。 きっと仕事で遅くなってるなんて、聡い彼女の事だ、そんなふうには考えない事はわかっている。 現にこうして僕は、彼女以外の女性、チョウとデートをしている。 「ねえ、時々こっちで仕事があるのかい?」 「まあね。普段は日刊預言者新聞で記事を書いているんだけど、あなたみたいに時々こっちで生活を始める有名魔法使いがいたりするから。」 「たとえば?」 「そうね・・・。あなたが知ってる魔法使いで言えば・・・、あ、ネビル、ネビル・ロングボトム。」 「え?ネビルもこっちで暮らしてるの?」 久しぶりに聞く旧友の名前に胸がときめいた。彼とは性格もタイプも全く違ったけれど、ほとんど親友に近い存在だった。いつも僕の事を信じてくれた、数少ない友人の一人だ。 「ええ。魔法界の植物だけじゃ足りないらしくて。今じゃこっちの大学の生物学の教授になってるわ。」 へえ。彼らしいや。 「おまけにあのスネイプ教授の助手をやってるって言ったらもっと驚くでしょ?」 「・・・!!まさか!」 「そのまさかなのよ。マグルの世界にも魔法薬に使える珍しい植物がたくさんあるとかで、今じゃ二人はパートナーとして学会にも顔を出してるのよ。ネビルはマグルの女性と結婚して2人の子供がいるわ。スネイプは・・・、独身だけどね」 事実は小説より奇なり・・・だ。あれだけスネイプを苦手としていたネビルが、彼のパートナー!? いやはや、自分はどれだけ魔法界から遠ざかっていたのだろう。たった5年の間に天地がひっくり返るほどの事実が起こっている。 「つまり。あなたが魔法界を離れて5年という間に、みーんな成長してるってことなのよ」 ・・・・。 そうなんだろうな。 自分は5年の歳月をかけてもなお、たったひとりの女性に対する想いに囚われて一歩も動けないでいる。 自分では吹っ切れたつもりでいても、いざその女性を前にしたら、動揺して無様で・・・。何一つ変わっていないのだから。 「で?僕の記事でも書こうとして追いかけまわしてたの?」 自分の周りにやけにチョウが姿を現すようになった理由が、そこにあるような気がして。 かつて、魔法界を救った英雄として祭り上げられていた自分の今の姿を、預言者新聞の記事にするのが彼女の仕事なんだろう。 「あら、随分じゃない」 「違うの?でもいざ近づいてみたら、記事になるようなことは何一つなくて期待外れだったろ」 「残念ながら外れね。あなたの担当は私じゃないの。私は今、とある人物の行動を追ってるのよ。聞いたらびっくりしちゃうから!」 どうだか・・・。 「あら、信じてない顔ね」 「じゃあ、誰なんだよ、その ”とある人物” って」 「ん〜、あなたには教えられないわ。私にもプライドがあるもの。記事になったら呼んで頂戴。一部送るわよ」 「興味ないよ」 「そんな事言ってられるのも今のうちよ。まあ、楽しみにしていてちょうだい。来月の頭には記事に出来ると思うわ。それより・・・。私が貴方に声を掛けたのは、単純に貴方が好きだからよ、ハリー。変に勘ぐらないで。悲しくなるじゃない」 好きだから、か。 こんな素敵な女性に好きだと言われて、喜ばない男がいるだろうか。 子供のころの自分は、今目の前にいるこの女性の一言一言に一喜一憂していた。 姿を見かければわけもなく挙動不審になり、会話をするにも手に汗をびっしょりとかいていたっけ。 「僕たち・・・、付き合ってみようか?」 決して昔のようなときめきがあるわけじゃない。 しかも、彼女に対してどこか冷めたような、バカにしたような態度をとってしまっていた。 いつもいつも。 それでも自分を好きだと言ってくれる彼女を、ほんのちょっぴり可愛いと思った。 今なら何の気負いもなく接していられる。 変に動揺することもなく、自分を飾ることもしなくていい。 又、以前ののように好きになれるかもしれないと思った。 「・・・え?本当に?」 「ああ。僕でよかったら」 「・・・嬉しいわ、ハリー」 そう言って彼女は俯き、顔をほんのりと紅く染めた。 その時、一瞬だけ。 自分が5年生の時好きだったチョウの姿が重なった。 |
≫Next(3-3へ) 3−2は裏(H×C)になります。裏の入口からどうぞ。 すっ飛ばしても話は繋がります。ハリ×チョウの絡みはどーでもいい方は、3−3へお進みください。 ≫戻る |