House 1-1

僕とハーマイオニーの再会はホント偶然だった。
ほんの些細な出来事が積み重なって、必然的にそうなったようなものだ。
だからあの日たまたま雨が降らなければ。
たまたま僕の仕事があの時間に終わっていなければ。

そして、
たまたま僕が、このマグルの世界で生活をしていなければ。

そう。これはただの偶然。不可抗力。
それ以外の何物でもない。


***


その日は朝から雨が降っていた。
魔法界で生活をしていれば、多少の雨も気にしない。
フルーパウダーでの移動は、天候に左右される事がないからだ。
だけどここは魔法界ではない。

11歳になったあの日。
僕がホグワーツを知る前の日まで、僕はこのマグルの世界で生活していた。
だからその時に戻ったように、バスに乗り、雨が降れば傘をさし、
自分の会社まで肩を濡らしながら歩くことになる。

雨は夕方になってもやまなかった。
やまないどころの話しではない。風も強く雨脚は強くなる一方である。
おかげでアポ先の顧客からはキャンセルの電話が相次いだ。
気付けば、午後3時からの予定がすべて取り消しになってしまったのだ。

既に窓の外はどんよりとうす暗く、自分のデスクの横の窓が曇り始めていた。

・・・・たまには早く帰ろうかな。

そう言えばここのところ休みとっていなかったことに気付いた。
毎夜11時過ぎまでオフィスに詰めていて、顧客管理やら伝票整理に追われていた。
まあ、追われていたというか、自分が好んでそう言う状況を作りあげていたんだけれど。


「やあ、ハリー。今日は早いんだな。」
「・・・ああ。たまには早く帰って部屋の掃除でもするよ。」

同僚たちに軽く挨拶をしながらエレベーターホールへと向かう。 そうだ。 たまには自分で夕食の準備でもして、ビールでも飲みながらこの間借りたDVDでも見るとするか。


急に出来てしまった時間をどう使おうか、考えながら少しだけいつもと違う予感を感じて、
雨に煙るオフィス街へ駈け出した。


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