19章 銀色の牝鹿 こんなの嫌だから勝手に変えちゃえ編・3
銀色に輝くそれは、まるで僕について来いと言ってるようだった。 でも罠かもしれない・・・。 「君はここにいて?」 「ハリー・・・。」 「いいから。」 一緒に行こうとする彼女を制して、僕はそっと牝鹿の後をついていった。 連れてこられたのは、森の中の小さな湖だった。 ハーマイオニーの杖で辺りを照らすと、湖の中央に割れ目があった。 そこから何かが光り輝いている。 やっぱり罠なのかもしれない・・・。 一瞬躊躇った僕だったけれど、銀色の牝鹿はなぜか敵じゃないように思われた。 根拠なんてまるでなかったけれど、その牝鹿を見ていると安心感さえ感じる気がした。 勇気を振り絞って湖の中を覗き込むと、そこにはあのグリフィンドールの剣が横たわっていた。 分霊箱を壊すための武器になる剣だ。 「アクシオ!」 無駄だとわかってはいたがそう叫んでいた。 しかし剣は微動だにしない。 諦めて湖の底に潜るべく、僕は一枚一枚着ているものを脱いでいった。 これのどこが騎士道なんだろうと恨みがましく思った。 そして下着一枚の無防備な格好で、僕は勇猛果敢に湖の底に向けてダイブした。 * * * 「ハリー! ハリー!?」 よく知った声が僕を呼んでいる。 誰だ・・・? 「おい、気は確かか?」 目の前にロンが立っていた。 片手に剣を、もう片方の手には鎖の切れた分霊箱が握られていた。 「これが君の首を絞めてた。 どうして潜る前に、こいつを外さなかったんだ?」 どうやら分霊箱の鎖で首を絞められ、間抜けにも気を失っていたらしい。 二度と戻ってこないだろうと思っていた親友が、そんな僕を助けてくれたのだった。 「どうして君が・・・ここに?」 「・・・話せば長くなる。でも、君がまだ僕を必要としてくれるのなら・・・・」 「必要としてるのは僕だけじゃない。 ハーマイオニーが一番悲しんでいた。 毎晩毎晩、君を寝言で呼んでいた。」 本当ならここで、彼に張り手の一発くらいお見舞いしたいところだったが、 そんな感情は彼の顔を見た途端、不思議な事になりを潜めてしまった。 「彼女が・・・僕を?」 「ああ。」 なぜここで不思議そうな顔をするのか疑問に思ったが、それどころではない。 ロンが取って来たこの剣で、早く分霊箱を壊さなくては・・・。 「君がこの剣を取って来たんだ。 君がこの分霊箱を壊すべきだと思う。」 「だめだめだめ!! 僕はこれに物凄く影響されやすいんだ。 できっこないよ!」 「いや、できるよ。 僕がこれを開くからその剣で・・・。」 これ以上抵抗されては叶わないと思い、ロンの嫌がるのを無視して 僕は分霊箱に向けて蛇語で「開け」と囁いていた。 得体のしれない憎悪が、ロンを苦しめ始めた。 ロンの今までの、人知れず悩んで苦しんできたことへ その分霊箱は嫌というほど追い打ちをかけ更に苦しめようとしている。 僕に対する劣等感。 いつも兄弟の陰に隠れて、存在感さえ発揮できないもどかしい気持ち。 ロンの顔が苦悶に歪んだ。 「刺せ、刺すんだ。ロン!!」 ロンの手が震えていた。 するとその分霊箱の中から、僕とハーマイオニーの姿が現れた。 そのハーマイオニーは、今まで見たことないような妖艶な表情で 僕にしな垂れかかっている。 幻とは解っていても、その姿に自分の体の中心が熱を帯びた。 なに、考えてるんだ、僕は・・・。 思わず見とれてしまって、ロンの様子まで気にかけてやれなくなってくる・・・。 そこへ悲痛な叫び声とともに、テントにいるはずの彼女が駆け寄ってきた。 幻と同じように僕の首に手をまわし、きつく抱きしめてくる。 あんまり強く抱きしめられていたので、彼女の顔は僕からは見えない。 そして一言、ロンに向って叫んだ。 「お願い!それを壊さないで・・・っ!!」 →
================================================= まだまだ続きます。 私もハーと一緒で、「こわすなーー!!」と 叫ぶところでしたわ。 でも、あっさり破壊されちゃいましたね。くすん・・。 =================================================