フレッドとジョージの店で、私は一つの魔法グッズに夢中になった。 「特許白昼夢呪文」 簡単な呪文で現実味のある最高級の夢の世界へ・・・。 これだ、と思った。 これがあればもしかしたらハリーは悪夢を見なくなるかもしれない。 そうすればヴォルデモートの罠にはまる事もなくなるかもしれない。 「ハリー?これ本当に凄い魔法だわ。」 運よくそれを手にした私は、早速説明書を読んでみた。 どうやら服従の呪文からヒントを得たようだ。 だけど人を服従させるのではなく、 その人の悪夢を取り去り、望む夢を見せてくれるだけの物。 ハリーの望む夢って何かしら・・・? いつも危険と隣り合わせのハリーだから、 せめて夢の中だけは安らぎの世界にいて欲しい。 そう願いながら眠りについた。 だけどこの時、私のこの考えがとっても 浅はかな事だったとは思いもしなかったの・・・。 学校に戻った日の夜、私はハリーに偶然この呪文を唱えることが出来た。 それと一緒に箱の中に入っていた、その呪文専用の杖を使って・・・。 果たして怪我をしたハリーの血を拭う様に、 彼の悪夢まで拭い去る事が出来たんだろうか・・・。 その日を境に、私は事あるごとにハリーに向けて呪文を唱えた。 特に寝る時間でもないのに、監督生の特権を利用して、 寮に入るパスワードに潜り込ませたりして・・・。 双子はたったの30分しか効かないって言ってたから、多分大丈夫よね? ところが、私は肝心な事を忘れていた。 ハリーは前から服従の呪文を唯一跳ね返すほどの 力を持った魔法使いだということを。 そしてもう一人、いつも私達と一緒にいるロンが、 呪いにとても弱いということも。 だけど、呪いには強いはずの ハリーの様子が少しずつ変わってきた。 何だかいつもジニーの事ばかり見てる。 まさか・・・、ハリーの見てる夢って、 ジニーの夢なのかしら。 「ハリー?」 「・・・」 「ちょっとハリーったら!」 「あ・・・、なに?」 「ねぇ、どこ見てるの? さっきからずっとジニーばっかり見てるわよ? 気になるの?」 「ば、ばか言うなよ!な、なんで僕がジニーを 見てなくちゃいけないんだよ!?」 ・・・・・・・・。 全く、解りやすい人ね? 真っ赤になって弁解するハリーを見て確信した。 ハリーはジニーの夢を見ているのだ。 だからいつも気になるのね? 一体ジニーとのどんな夢なのかしら? ハリーの安らぎって・・・。 私は呪文を唱えるのをやめた。 なぜか面白くない。 べつに私の夢を見てほしいなんて思ってないけれど、 どうしてこの期に及んでジニーなの? それとも彼の潜在意識の中では、 いつもジニーが癒しの対象だったのかしら? 不機嫌な私に拍車をかけるかの様に、 もう一人の親友の様子まで変化していった。 いつもいつも私を意地悪な目で睨み、 揚句の果てにはラベンダーとキスしたりハグしたり。 「特許白昼夢呪文」に影響された人物がここにもいたのだ。 ううん、恐らくハリーよりも何倍も影響を受けているに違いない。 「ねえ、ジニー?私ロンに何かしたかしら?」 「うふふ・・・、気がついた? あなたがハリーに仕掛けた様に、私もちょっとロンにね・・・。」 「えっ!?あなたも何かしたの?」 私はジニーのこの一言に、余計な事を喋ってしまったと後悔した。 「・・・・・・。やっぱり。 ハーマイオニー、ハリーに白昼夢呪文かけたわね?」 「え?いえ・・・、あの〜。 やだ、ジニー。騙したわね?」 「だって!おかしいと思ったんだもの。 私が愛の妙薬を使おうと思う前から、 ハリーは私を意識しだすんだもの。」 「あ、愛の妙薬って?」 「忘れたの?WWWで兄さん達が見せてくれたじゃない? あれをね、ハリーにちょっと使ってみたの。 そうしたら愛の妙薬を単品で使ったのとは違う効果が現れたから・・・。 しかもロンまで様子が変でしょ? あ、これはハーマイオニーが何かしたなと思ったわけ。」 「でも私は愛の妙薬なんて使ってないわよ?」 「でも本当は使ってみたかったんじゃないの? ハリーとロンに。」 「ばかな事言わないで! どうして私があの二人に愛の妙薬を使わなきゃいけないのよ?」 「決まってるでしょ? 両方とも自分のものにしたいから・・・。」 「ジニー!!」 「冗談よ。 でもハリーに白昼夢呪文を使ったのは認めるのね?」 「・・・・・・えぇ、認めるわ。 だって・・・、 去年みたいにハリーに悪夢を見て欲しくなかったんだもの。 もう大切な人を無くして欲しくないんだもの。 それだけの理由なのよ。 ねぇ、ハリーには黙っていて?」 「ざ〜んねんでした、ハーマイオニー。 もう聞いちゃったよ?」 「「ハリー!!」」 私とジニーはびっくりして振り返った。 あぁ、神様の意地悪・・・。 「ハリー?・・・怒ってる?」 「ああ!カンカンだね。 君らしくないよね?そんな小細工するなんてさ。 どうしてもっと僕を信じてくれないの? それからジニー。 スラグホーンが言ってたよ。 世界一強力な愛の妙薬を使っても、 本当の愛を作り上げたり、模倣することは不可能だって。 今も君の事、堪らなく大好きだけど、これって薬のせいなんだよね? 僕は自分の愛する人くらい、自分で決めるよ。」 「ロンがラベンダーを好きになったのも、 多分ハーマイオニーが放つ強力な呪文のせいだと思う。 君ももう少し自覚してよ。 学年一の優秀な魔女が放った呪文なんて、 抵抗できるのは僕くらいなものだって事。 かわいそうに、ロンなんか朝になるとぼーっとしちゃってさ。 よだれまで垂らして、覚醒するまでに30分もかかるんだぜ。」 「だけど、あなたは私の呪文にかかったんじゃないの? ジニーの夢・・・、見てたんでしょう?」 「僕がかかったのは、ジニーの愛の妙薬の方さ。 さっきも言っただろ?僕は呪いに強いって。 まあ、君の呪文の強さで、愛の妙薬に相乗効果があったのは認めるけどね。」 余裕の笑みを浮かべてはいるものの、 ハリーが真剣に怒った時の瞳を見て、心底後悔した。 そうよね。 ハリーは私なんかの呪文がなくたって、 十分一人で乗り越えられたはずだわ。 それなのに私ったら・・・。 「ハリー、ごめんなさい。 あなたを見くびってたかもしれないわ。」 「かもしれないじゃなくて、見くびってたんだよね? 僕は呪文をかけられた事より、その方がよっぽどショックだよ。 でもさ、僕の事を心配してやったことに免じて、 今回だけは許してあげる。 ジニーも。 僕を想ってしてくれたんだろうから、許してあげるよ。」 そして飛びっきりの黒い笑顔でこう言われてしまった。 「そのかわり・・・、仕返しはさせてもらうけどね?」 仕返し? 私とジニーは顔を見合わせた。 ハリーが冗談を言ってるようには見えない。 「ハ、ハリー?仕返しって?」 「そんなの言うはずないだろ? 仕返しなんだから。 まあ、覚悟しときなよ? ロンと二人でとっておきの仕返しを考えておくからさ。」 私は更に更に後悔した。 そして中途半端に笑うと、精一杯の強がりを言ってみる。 「お、お手並み拝見するわ、ハリー?」 →
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ハリー誕生日(7/31)に向けて、連載スタートです。 特に凝った内容ではありません。 単純にハリーを幸せに・・・という事と、 ハリハーで甘めに・・・の2つを目標にしております。 |
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