LESSON 5
人の話を何一つ聞かないで、揚句の果てには いきなりキスするなんて、何て男なの!? もしかしてあの時、あんな事を許しちゃったから調子に乗ってるのね? それか…遊ばれてるのかも…。 ううん、そんな事絶対ない。 ハリーはそんな人じゃないもの。 私を傷つける事なんてするはずないわ。 じゃ、どうしてキスなんか…? 実際、ハリーにキスされることは、決して嫌なわけじゃない。 本当の恋人同士なら、迷わず彼の首に手を回して 自分から彼を求めることだってすると思うの。 もし万が一、彼が私の事を好きでキスしてくれていたとしても 彼には今ジニーという、誰もが認めている恋人がいる。 それがどうしても私の心にストップをかけている。 「ハーマイオニー?どうしたんだい?えらく疲れた顔して…」 「そう?でも疲れてるのは当たってるわ。顔に出てる?」 「悩み事でもあるんじゃないか? そんな時はゆっくり風呂にでも入って、早く寝るにかぎるぜ?」 「そうね、ロン。そうするわ。」 「今夜は結構寒いよ。マント着てけよ。」 マントは女子寮のベッドの上に置いてきていた。 これから寮に取りに行くのは面倒くさい。 「ロン、あなたのマントを貸して?私のは上にあるの」 「ああ、いいよ。でも忘れてくるなよ。僕、これしかないから。」 「ありがとう、助かるわ。」 そう言ってロンからマントを借り、監督生のお風呂場へ向かった。 〜〜〜〜〜〜 彼女の言う通り、僕は本能に従ったまでだ。 なのになぜひっぱたかれなきゃいけないんだ? 「全く…加減を知らないんだから…。あぁ〜痛い!」 頬を摩りながらむしゃくしゃする気持ちを何とかしたかった。 こんな時は風呂にでも入って、早く寝よう! そう思い立って、僕はクィディッチのキャプテンも使える監督生風呂へと向かった。 扉をあけると先客がいるようだった。 女の子だったら扉の外に札が掛かるはずだから、 僕は何も気にせず脱衣所に入って行った。 「あれ?ロンのマントじゃないか。 なあんだ、来てたんだ。 よし、今夜はロンでもからかってすっきりしようっと。 しかし、ロンにしては随分丁寧に畳んであるなあ…」 僕は自分の着ている物を脱ぎ、眼鏡を外すと 音を立てないようにそっと浴槽に近づいた。 あれ?何処にいるんだ? 眼鏡がない上に湯気でよく見えないじゃないか… それでも何とか転ばない様に浴槽に辿り着くと、静かにお湯の中に入り、 そしてロンらしき人物をやっと見つける事が出来た。 全く無駄に広いからなあ、ここは…。 そして一つとっておきの悪戯を思いついた。 そうだ、これならロンもビックリするぞ。 考えただけで笑いが込み上げてくる。 さっきまでむしゃくしゃしていた事なんて、すっかり忘れていた。 …そして僕はジニーの声色を真似すると 「ロン兄さん、背中流してあ・げ・る…」 そう言って後ろから腕を回して抱き着いた。 ・・・ん? ロンて以外と柔らかいんだ… そう考えて自分の手を、その人物の胸辺りで動かしてみた。 「ジニー?随分と大胆な事をするじゃない? それに残念ながら私はあなたのお兄さんじゃないわよ?」 背中を向けたまま、クスクスと可笑しそうにその人物は言った。 僕は体中の血が引いていくのが自分でもはっきりとわかった。 こ…これは、100%ロンじゃない。 それどころか今一番その人物であってはならない人だ。 「ちょっと、私の胸の上にあるこの手を退けてくれないかしら? …もう、人をからかうのが好きなんだから・・・」 笑いながらその人が振り返る。 頼む!!振り返らないでくれっ!! 心の中の叫びも虚しく、彼女とバッチリ目があってしまった。 しかも僕の両手は、まだしっかりと彼女の胸を握っていたりなんかして… 時間が止まった… 彼女の思考が現実に追い付いてこないようだ。 僕にとっては至福の…いや、地獄のような時間が過ぎてゆく…。 思い切り叫ばれるかと思った。力の限りひっぱたかれるかと思った。 だけど彼女はその両方ともしなかったんだ。 「私が幻を見ているの?」 「ハ、ハーマイオニー…?」 「それとも本当にハリーなの?」 「ごめん…。幻でも何でもない。 正真正銘のハリー・ポッターだよ。」 「どうして此処にいるの?」 「ロンのマントがあったから、てっきり彼だと思って…。 ロンをからかってやろうと思って…こんな事を…。 本当にごめん。」 素直に謝る僕を見て、彼女は優しく微笑んだ。 そしてそのまま僕の方に向き直り、裸の身体で抱き着いてきた。 「ち、ちょっとハーマイオニー!!」 「ハリー、ほんとはね、私... あなたにいつもこうして抱きしめてもらいたいんだわ・・・」 「よ、酔ってるんじゃないよね・・・?」」 「あなたに抱きしめてもらいたい...って考えてたら 本当に来てくれた・・・」 彼女は裸の胸を僕に押し付け、腕は腰に回している。 この間は服を着ていたけど、今日はお互い生まれたままの姿だ。 だから今、僕の体に起こっている非常にまずい状態は、はっきり彼女に伝わっているだろう。 このまま突き進んでいいような雰囲気なのは何となくわかるんだけど・・・ 多分自分は今、ギリギリのところで必死に戦っているのは十分わかっているんだけど・・・ 欲だけで彼女を抱いてしまっていいのか?ハリー・ポッター。 それは彼女を傷つける事になるんじゃないのか? ジニーに感じたことのないこの感情は、彼女を愛してるという事なのか? ずっと親友だと思っていたこの目の前の彼女を・・・? 「抱きしめてもらいたい...じゃなくて、もう一度ひっぱたいてやりたい!の、 まちがいじゃないのか?」 「ひっぱたいてもらいたいの?」 「...うん。ひっぱたいて、馬鹿な僕をさっきみたいに叱ってくれよ。 ジニーと付き合っているくせに、今君とキスしたいと思ってるんだ。」 そう言って彼女の唇を指でそっとなぞってみた。 「キス...だけで...いいの?」 その言葉を聞いてハーマイオニーは更に腰を密着させた。 や、やばいよ、ハーマイオニー。 こ、これが感じるって事なんだ。 「ねぇ、ハーマイオニー? もしかして又僕の事...挑発してる…?」 「好きよ、ハリー。」 「僕も。・・・君の事が大好き。」 そして繋がる唇・・・ 「挑発にのっていい・・・?」」 「本能の赴くままよ、ハリー・・・」 …と、僕たちがやっと一つに結ばれようとしたまさにその瞬間、 お風呂場の明かりがすべて消えた。 0時を回った合図だった。 この時間を過ぎると、ホグワーツは屋敷しもべ妖精達の働く時間になる。 「ふふふ・・・」 「・・・ドビー達に見つからないうちに、ここから出なきゃ・・・」 「そうね・・ふふ・・」 「何がおかしいんだよ...。 ...ったく!変になりそうだよ、僕・・・」 「じゃあ、この間の教室へいきましょう? 透明マントを着て・・・」 僕は何も言わず彼女をじっと見つめた。 そして唇の端を軽く上げ、目だけで「行こう・・」と囁いた。 LESSON 6(最終回)へ →
======== 果たしてハリーの願いは叶ったのか・・・!? この先は皆さんで想像して楽しんでくださいませ。 さあ、次回は最終回です。 ジニーとはっきりけじめをつけ、ハーとHAPPYになってもらわなくちゃね? ========