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PUMPKIN JUICE




一日の授業が終わり、今大広間ではそれぞれが夕食をとる時間。
寮ごとに分けられたテーブルが、少しずつ埋まっていく。
いつものようにロナルド・ウィーズリーは一番乗りでテーブルに着いていた。


「相変わらず早いなあ、ロンは。
 あれ?いつも一緒のハリーとハーマイオニーは?」


ネビルが疲れきった表情で、ロンの隣に腰掛けながら聞いてきた。


「ん〜?し、知らない。
 腹へってたから待ってなんていられないよ。
 もうすぐ来るんじゃないかな〜。ハハハ・・・」


なぜかどぎまぎして答えるロンに怪訝そうな表情を浮かべたネビルだったが、
もともと深く考える事の苦手な彼は、そのまま目の前のポテトに手を出した。

「ちょ、ちょっとネビル・・・。
 悪いんだけどもう少し僕から離れて食べてくれないか?」

「え・・・?そう?」

「わ、悪いねえ。その方が君にとってもいいと思うんだ。」

「僕にとって・・・、何がいいわけ?」


まあ、いいからいいからとロンは多くを語らなかった。
心なしか顔が赤い。
変なの・・・と、ネビルは肩を竦めただけで食事を続ける事に専念した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ハリー!
 どうして私たち透明マントを被らなくちゃいけないの?」


ハーマイオニーはハリーだけに聞こえる声で詰問する。


「どうしてか?そんなの決まってるじゃないか。
 こうして君の口にパンを運んだり、サラダを食べさせたりするためさ。」


そう言ってハリーは千切ったパンをハーマイオニーの口の中に押し込んだ。
それを素直に食べながら、それでも文句を言ってくる。


「だったらマントはいらないでしょう?
 普通に食事をしたっていいじゃない!」

「ダメだよ、ハーマイオニー。
 君はみんなにこんな事をしているところを見られたいの?」


ハリーはゴブレットの中のパンプキンジュースを口に含むと、
そのままハーマイオニーの唇へ近づき、それをそっと口の中へ流し込んだ。


ごくりと飲み込む音にハリーは小さく微笑む。



「ちょ・・・ちょっと、ハリー!」



ん?何?と首をかしげるこの男に、悪びれた様子は微塵も感じられない。
それどころか、甲斐甲斐しくハーマイオニーの口元をナプキンで拭いたりしているのだ。



「いいじゃないか。誰からも見られないんだし。」

「そういう問題じゃないわ、ハリー。
 私一人でも食事ぐらいできるわよ?」

「そんなのわかってるよ。」

「・・・だったら・・・!」

「何、ハーマイオニー。僕とこうしている事が気に入らないの?」



ドキッとする程の鋭い碧の目で見詰められて、ハーマイオニーは何も言えなくなってしまった。









そもそも事の始まりはこうだ。

つい先日いつもの様に3人で朝食を摂っている時のこと。
あわてて食べているロンの口元にケチャップがついていたので、
それを何気なくハーマイオニーは手で拭ってあげたのだ。
真っ赤になったロンを睨んでいたのは、そう・・・。
敵に回したくない男ナンバー1の、ハリー・ポッター。

「何も素手で拭ってやる事ないじゃないか!?」と散々怒り、
挙句の果てにはロンにまで、
「君、ハーマイオニーにそうして貰いたくて、わざと口にケチャップつけただろう!?」
とまで言い出す始末だった。

ハリーとハーマイオニーが付き合いだしたのは、
三校対抗試合の第一の課題が終わった頃からだった。
夜通しハリーに呼び寄せ呪文を教えるために空き教室を利用して、
そう・・・、心と身体を通わせた。

だけど、このハリー・ポッター。
想像以上に独占欲が強かったのである。
殊更ハーマイオニーに関しては、病的とも思われるような独占欲を発揮した。
そのとばっちりを受けるのは大抵いつも一緒にいるロンなのだ。

今日も隣で透明マントを被って、いちゃいちゃ食事をしている事は百も承知だった。








「はい、ハーマイオニー。あーん・・・。」

怒らせるとヴォルデモートより怖い事を知っているハーマイオニーは、素直に口を開く。
先ほどまで躊躇してはいたが、そこはハーマイオニーもハリーにベタ惚れだったので、
鋭い目で睨まれ、もうどうでもいいわ・・・の心境になっていたのである。


「ねえ、ハリー?今度は私が食べさせてあげるわ。何がい〜い?」

「ん〜〜、じゃあ、パンプキンジュースvv」

「パンプキンジュースね?はい、こぼさないで。」

「違うよ。さっき僕がしたみたいにして飲ませてくれなきゃ・・・。」



真っ赤になったハーマイオニーだが、それでも素直にゴブレットを自分の口に運ぶ。
そして微かに尖らせた唇をハリーの唇へと寄せていった。

「んん・・・、おいしい。」

「なにが?ハリー・・・?」」

とろんとした目でハリーを見上げるハーマイオニーに、更に唇を重ねて、

「何が・・・って、ハーマイオニーの唇が・・・。」

「ばかね・・・。じゃ今度は私の番よ?」

「うん。何が食べたい?」

「そうね・・・、うふふ・・・。やっぱりパンプキンジュースv」


そうやってキスする口実に、飲み物ばかりを強請る二人である。
我を忘れていちゃついているから、もう隣に座るロンには二人の会話は筒抜けだった。
さっきから、「ん・・・」とか「あん・・・」と言う声に混ざって、くすくす笑いの声が聞こえてくる。
テーブルの上の食事はほとんど減っておらず、飲み物ばかりが無くなって行く。
 

そうこうしているうちにロンの食事が終わった。
ハリーとハーマイオニーが食べていたお皿も、何とか空になっている。
ゴブレットも置いてあったので二人の食事も終了したんだと思い、



「そ・・・そろそろ談話室に戻るかい?」と声を掛けてみた。



返事はなかった。
まだ何かに夢中になっているんだろうかと、恐る恐るその席を手探りで確認してみる。
・・・いない。
二人とも既にロンを置いて、大広間から出て行ってしまっていた。



「な・・・なんだよ〜。
 僕に回りに人が来ないように見張らせておいて、
 自分達はさっさと帰っちゃうんだもんな〜。
 ありえないよ・・・。」


とぼやいてはみたが、少しホッとしたロナルドであった。





このあと勿論談話室に二人の姿などなかったし、
ハリーのトランクの中の透明マントもそこに入ってはいなかったのである。


                                                                 END




掲示板初カキコをしてくださったsinoさんのリクエストです。
原作の背景をあまり深く考えずに書いたので、ちょっとハリーの性格に違和感が残ってしまうでしょうか・・・?
でもこういうのってとっても書きやすい!!楽しい!!
sinoさん、望んでいた物とは違うかもしれないですが、御礼として愛を込めて書かせていただきましたvv
本当にありがとうございました!
('07.09.20)