注)
軽めのBL要素を含みます。
その手のモノに嫌悪感を感じる方は読まないほうがいいかも。
ハリーもかなり怪しいお兄さんになってますのでご注意を。



TEMPTATION

自分の誕生日を明日に控え、ドラコ・マルフォイは一通のふくろう便を受け取った。 差出人を見ると、自分の母親の名前が記してあった。 だけどいつも自分に送られてくる手紙とは、明らかに様子が違っていた。 誰にでも簡単に買えるような安っぽい封筒は、 まるで子供が糊付けをしたかのように、所々糊がはみ出して封がされていた。 いつもの重厚で品のある手紙とはあまりにも違っていた為、思わず眉をひそめる。 「・・・母上・・・?  誰かに頼んだのか・・・?」 それでも・・・と思い、ドラコは封を切った。 いつものペーパーナイフが思うように滑って行かない。 あきらめて手で封を破くと、中からは使い古した羊皮紙に書かれた手紙が現れた。 「よっぽど慌てていたか、屋敷しもべに頼んだかのどちらかだろう・・・。」 あきらめてドラコはベッドに腰を下ろすと、 その母親からの手紙に目を通す。 親愛なるドラコ 明日はあなたの誕生日ね。 マダムマルキンのお店に、あなたの新しいスーツを作ってもらう様に話してあるの。 明日の午前中にお店に行って、採寸をしてきてちょうだいね?                    ナルシッサ 「・・・え?  これだけ?」 いつもならしつこいくらいに学校の事や、友達のこと、 マルフォイ家の家訓についてなど・・・、 それはそれは長い手紙を寄越すくせに。 今回の手紙は、本当に用件のみが記されていた。 不審には思ったが、まあ、明日マルキンの店に行って 詳しい事を聞いてみようと、ドラコは手紙を自分の机に閉まった。 * * * その頃グリフィンドールの談話室では・・・。 「ねえ、ハリー。  本当にやるつもり?」 「僕はそうと決めたら、絶対に行動に移す男だよ。」 「でも・・・。  あなた、マルフォイとは犬猿の仲でしょう?  どうしてまた急にそんな事を思いついたの?」 「どうしてだろ・・・。  急に興味が湧いて来たんだ。  大嫌いな奴だけど・・・、なんか気になるって言うか、  もっと近くで観察してみたいって言うか・・・。」 「か、観察ーーー?」 「うん、観察。  ねえハーマイオニー、知ってる?  マルフォイって近くで見るとめちゃくちゃ綺麗な顔してるんだぜ。」 「知ってるわよ。  巷じゃ”スリザリンの姫”って呼ばれてるもの。」 「だろ?」 「だからって、バレたらただじゃ済まないわよ?」 「だから君に頼んでるんじゃないか。大丈夫!  準備の方は完璧?」 「ええ。あとは相手の一部をここに入れるだけ。」 そう言う二人の目の前には、あのポリジュースが置いてある。 決行日は明日・・・。 マルフォイの誕生日。 「サンキュー、ハーマイオニー。  やっぱり君は頼りになるよ。」 そう言ってハーマイオニーの頬に軽くキスをする男の顔に 不敵な笑みが広がって行った。 * * * 次の日、ドラコは手紙に書かれた通り、 午前中にマダムマルキンの店のベルを鳴らした。 「これはこれはドラコお坊ちゃま。  奥様から話は聞いております。  どうぞこちらへ・・・。」 いつも愛想のいい店主、マルキン夫人がドラコを奥へと案内する。 「ところでマルキンさん。  母上は本当に僕に採寸をしろと?」 「え、ええ!ドラコお坊ちゃま。  もちろんでございますよ?  なぜ、そんな事を御聞きになるのです?」 「いや、ならいいんだ。  珍しい事もあるものだと思ってね。  僕のスーツを作る時に、母上が採寸をしろなんて言ったことがなかったからね。  でもいいんだ。  どうせ作るのなら、体にあったものがいいからね。」 愛想笑いを浮かべて、「今、準備をいたします。」と言って奥へ引っ込む夫人を なにやら怪しい人物を見るかのように、ドラコは眼で追った。 「なるべく急いでくれるかな。  今日は僕の誕生日だから、友達がパーティーを開いてくれるんだ。」 「はいはい・・・。  承知しました。ドラコ坊ちゃま・・・。」 奥の部屋で採寸の準備をしながら、マルキン夫人は嫌な汗をかいていた。 それはこのマルフォイ家の一人息子から発散される 人を寄せ付けぬようなオーラのせいや、 人を見下したような尊大な態度のせい・・・ではない。 実際はナルシッサの手紙など元々ドラコに届くはずもない事や、 そのナルシッサからの指示で採寸をするのではない事、 そして・・・、 ここに立つマルキン夫人は実際のマルキン夫人などではない事が理由であった。 そう、ここにいるのは先ほどポリジュースでマルキン夫人に変身した、 グリフィンドールの英雄、ハリー・ポッターだったのだ。 (思いっきり怪しんでる、マルフォイの奴。) そう考えたハリーは、なるべく早く目的を達成しようと 小走りでドラコのもとに舞い戻った。 「さ、さあ。お坊ちゃま。  採寸を始めますのでお立ち頂けますか?  そして出来る事なら、下着1枚になっていただきたいと・・・?」 「あ?ああ。」 ドラコはそれがハリーだとは疑いもしないで、 次々と着ているものを脱いでいった。 (警戒心のない男だな・・・。  いきなり脱ぐなよ。) 自分で脱げと言っておきながら、随分勝手な事を思うハリーであった。 ところがボクサーショーツ1枚になったドラコの体を見たとたん ハリーの思考はあっさりと停止してしまった。 普段は決して目に触れることのないドラコの体。 それはまさにハリーの今までの ドラコに対する概念を覆すほどの威力を持っていた。 いつも自分の顔を見れば突っかかってくるこのイケスカない男は 女性のように細く繊細で、透き通るように真っ白だった。 触れれば折れてしまいそうな儚げな雰囲気を纏っている。 すっかり目を奪われていたハリーに、ドラコの辛辣な一言が突き刺さる。 「・・・まだかな?早くしてくれないと風邪をひいてしまう。  僕は丈夫な方じゃないんだ。」 我に帰ったハリーは、すっかり毒気を抜かれてしまい 急にドキドキしてきた。 「す・・すみません。  すぐに始めさせて頂きます・・・。」 掠れた声で何とか返答すると、 メジャーを持った手を恐る恐るドラコに近づけていく。 後ろに回って肩幅を計った。 肌の色と同じプラチナブロンドから覗くうなじがハリーを刺激する。 (うっわ・・・。折れそうだ・・・。  しかもいい匂いがする・・。) そう思いながら、メジャーを持つ手を何気なく肌に這わせてみる。 (しかもスベスベじゃないか・・・。 君、実は女の子じゃないの・・・?) そして抱きつくような形でマルフォイの胸囲を測る。 そこでも、相手から仄かに香る中性的なコロンの香りに ハリーは眩暈を起こしそうになっていた。 いつもなら鉄壁な鎧を纏っているように感じられるマルフォイが 今日は無防備にハリーの前に裸の胸を晒している。 だけど呪いをかけてやりたいと思う前に、 スリザリンで自分の敵であるこの男に抱きつきたい衝動を 抑える事に必死になっている自分に気付いた。 (しっかりしろ、ハリー・ポッター!  こいつをただ、からかってやりたかったんじゃなかったのか!?) 「つ、次はウェスト、測りますね・・・。」 動揺を悟られないよう、平静を装いながら愛想笑いを浮かべる。 ところが、やっぱりこの状況を不審に思ったのか、 「だけど・・・、僕、半裸でいる必要ってあるんだろうか・・・?」 と聞いてくる。 (ないに決まってるだろ?マルフォイ・・・。) 「そ、そりゃあ、採寸は服を着た上からじゃ、  正確な値はでないですからね・・・。」 もっともらしい事をいってのける。 だけど、マルフォイを観察するだけのことで、 何もパンツ一丁にする必要はどこにもないのだ。 しかしここまできたら、もう止めるわけにはいかない。 素直に半裸になってくれたマルフォイのためにも、しっかり観察を続けようと 変な言い訳を頭の中で繰り返していた。 そして、マルフォイの腰回りを測るべく、立ち膝になる。 腰にゆっくり手を回すと、必然的にハリーの顔が・・・、ドラコの・・・。 「ちょ・・・、ちょ・・・、ちょっと!  か、顔が、近すぎないか・・・!?」 「え・・・? ど こ に・・・?」 「うわあっ!その位置で喋るなーーー!!」 何とかこの場を凌ごうと、ドラコは腰を揺らして離れようとするものの、 マルキン夫人に扮したハリーの腕が、しっかりとドラコの腰に回っていて もがけばもがくほど、突き飛ばされまいとするハリーの腕が強くなる。 ドラコにしてみれば、相手はかなり歳の離れたマルキンという女性であって そんな女性に下着姿を見せる事だけでもこっぱずかしいのに、 今やほとんど貞操の危機すら感じるようになっていた。 「マ、マルフォイ、そんなに暴れるなよ・・。」 「・・・え?  今、何と言った?」 あまりにもマルフォイが暴れるので、 とんでもない事を口走ってしまう。 額に嫌な汗が流れてきた。 「や、すみません。なんでもないです。  オホホホ・・・。」 (やばいやばい。  だけどこれって、僕 変態っぽいよな・・・。) 自分がかなりバカみたいな事をしている自覚はハッキリとあったが、 不信感をあらわにした表情で見つめてくるマルフォイをあっさりと無視して ひきつった笑いを浮かべてみせた。 そして何事もなかったかのように、 ハリーはドラコの下腹部に思いっきり顔を近づけ、 その胴周りを計測した。 「・・・・っ!」 マルフォイの息をのむ音が聞こえた。 ーーーーー65センチ。 ハリーは自分よりはるかに背の高いこの少年が、 自分よりずっと細い事に今、改めて気がついた。 (僕よりいい生活していたくせに、ろくな物 食ってなかったんだな。) と、短絡的な事を考えるハリーの目に、予想外のものが飛び込んできた。 ボクサーショーツのウェストゴムのわずか下。 顔を近づけていないと分からないほどの薄い傷痕。 かなり前に付いたものだと言う事は、その色の薄さからもわかるが、 かなりひどい怪我だったんだろう。 幅にして1センチ位の傷が、普段人目には触れない場所へと続いていた。 「マル・・・ドラコお坊ちゃま?  この傷は・・、いつ頃どうして・・・?」 「え?  マルキンさん、今頃何を言ってるんです?  ご存じのはずでしょう?」 目を丸くして下を睨みつけるマルフォイに、ハリーはドキドキした。 なんてバカな質問をしてしまったんだろう。 今更なんでそんな事が気になるのか。 たかがマルフォイのお腹の傷ぐらいで、 その理由を聞きたくなるなんて。 ところが、その理由はおろか、 ハリーはマルフォイの口から、信じられない言葉を聞くことになった。 「こんな傷、体のあちこちにありますよ。  魔法で消してはいるけどね・・・。」 「え?」 「父上は実践がお好みでね。  禁じられた呪いを習得するには、実践が一番だって言うんだ。  でも僕はマルキンさんも知っての通り、好きでこんな事をしてるわけじゃない。  無抵抗でいれば、体中あちこちに傷がつくのは避けられないからね・・・。」 「好きでやってるわけじゃない・・・?」 「ええ。  僕は、好きであっちの側にいるわけじゃない。  だけど選択肢もない。」 「・・・・。」 「だから僕はそうするしかないんだ。」 ハリーは動けなくなっていた。 いつもいつもハーマイオニーを穢れた血とバカにして、 自分を見れば必ず突っかかってくる嫌な奴のマルフォイが、 自分は闇の側に付きたくはないと言っている。 しかも父親から受ける、禁じられた呪いの実戦でさえも 無抵抗で受けているというのだ。     「何度もお話しましたよね、マルキンさん。」 「え?  ああ・・・、そ、そうでしたね。  すみません。嫌な事をお話しさせてしまって・・・。」 「いや、いいんだ。  もしかしたら初めてだったかもしれないしね。  ここにこんな傷のあるマルキン夫人に話すのは・・・。」 そう言ってハリーのおでこを指でパチンと弾いた。 「き  ず・・・?」 あまりにも今マルフォイが言っていた話の内容がショックで、 傷という言葉が何を意味しているのか、ハリーは全く気付いていなかった。 そんな様子を見ていたドラコは呆れるようにクスッと笑って、 「さあ。  はやいとこ終わらせて下さい。  あー、あとは適当でいいよ。  こんな事をする意味は、どうもなさそうだからね。」 そう言われてもハリーはしばらく動けなかった。 ショックだった。 ずっと忌み嫌っていたマルフォイが、実は闇の陣営を支持してないことも、 父親からの呪いを抵抗せず受け止めていることも、 そして、そんな自分の置かれた境遇をすでに諦めていることも。 「おい、マルキンさん・・・?」 微動だにしないマルキンに扮するハリーを見やって、 ドラコは少し後悔していた。 ・・・喋りすぎたかな・・・。 「そんなにショックでしたか?  この傷が?それとも今の僕の告白が?」 「あーーー、両方かな?」 「そうですか。  この傷、一番古いヤツなんだ 。  ほら、ここまで続いている・・・。」 そう言うとドラコは自分の下着をスッと膝まで下ろし、 指でその傷を辿って見せた。 それはドラコの下腹部からわずかに性器を逸れ、 太ももの半分くらいまで続いていた。 「危機一髪だろ?  場所が場所なだけに、魔法で消すのも憚られる・・・。」 その傷を凝視していたハリーの指先が そっとそれをなぞっていく。 「ホント。  危機一髪だよ・・・。」 その言葉を聞いてドラコの眉がスッと上がる。 そして二人で吹き出した。 * * * 「さ、マルキンさん。  僕はもう時間だから行くことにする。  今日聞いた話は内緒にしてくださいませんか?  どこから父上の耳に入るかわかったものじゃないからね。    あ、それから・・・」 ドラコはテキパキと身支度を整えながら早口で話す。 「もし近いうちにポッターがここへ来ることがあったら  伝えておいてほしいんですけど・・・・。」 ハリーはドキッとした。 マルフォイが僕に伝言・・・? いや、この状況は絶対にばれるはずがない。 ばれてるわけじゃないから焦る必要はない。 でも、ばれてなきゃマルフォイが僕に伝言なんておかしすぎる。 何の自信があるのか、この状況を絶対にばれてないと信じているハリー。 ハーマイオニーのポリジュースは絶対だと信じてるハリー。 だけど、 「ポリジュースは1時間で効果はなくなるって・・・。」 マルフォイの口元が上がる。 そして店のドアを開けた。 そして振り返り、自分のおでこに稲妻形のラインを指で描きながら 「それともう一つ。  なかなか素敵なバースデー・プレゼントをありがとう・・と。」                            E N D                               


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ハリーのキャラが酷すぎた・・・。
でもドラコと絡ませるとなぜかこうなってしまうんです。
いつかカッコいいハリドラSS、書いてみたいです・・・。(やめとけ)
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