19章 銀色の牝鹿 こんなの嫌だから勝手に変えちゃえ編・5

自分でもどうしてそんな行動に出たのかわからなかったけれど、 なぜか彼女に触れていたかった。 痛々しいまでの健気さを見せた彼女を・・・。 でも、自分の気持ちまでは気付かなかったし、 ロンの言う、ハーマイオニーの気持も全くわからない。 ハーマイオニー・・・どうして・・・? 君は一体どうなってしまったんだ? 気を失ったままだった彼女がほんの少しだけ身動ぎした。 僕はすかさず声を掛ける。 「ハーマイオニー?  大丈夫?」 しばらくぼんやりした目で僕を見つめていたが、 ようやく意識がはっきりしてきたようで、びっくりしたように僕を見る。 「ハ、ハリー!」 「目が覚めた?」 「私・・・一体・・・?」 「分霊箱を壊す時、君、気を失ったんだ。  剣を構えるロンに向って、それを壊さないで・・・って叫びながら。  ・・・ねえ、どうして止めたの?」 「言えない・・・わ。  これだけは・・・。」 「・・・そうか。  僕には言えないよね?嫌われて当然だもんね?  元気になったら、ロンも戻ってきたことだし、二人でロンドンに帰りなよ。  分霊箱も一つ破壊出来たし、きっとこれからもぼ・・・」 「まだそんな事を言ってるの!?」 そう叫ぶなりむくっと起き上がった彼女は、 僕の体のいたるところを殴り始めた。 「え・・・?え?ちょ、ちょっと、ハーマイオニー!  どうしたんだよ。い、いてっ。」 「私はあなたと行くって決めてるの!  ずっと前からそう決めてたの!  親友としてでいいから、私はあなたと一緒にいたいのよっ!!」   どういうこと? 僕とは一緒にいたくないんじゃあ・・・。 「どうしてだよ。  僕となんて二人でいたくなかったんだろ?  ロンの名前ばかり呼んでたじゃないか。  今更弁解なんて聞きたくないよ。  無意識で言った言葉は本心に決まってるだろ?」 「そうよ!  あなたとなんて二人っきりになんかなりたくないわよ。  ロンがいなくなってから気が狂いそうだった。  どうしていいかわからなかった。  閉じ込めた想いが溢れてきそうで・・・、  どうしたらいいか分からなかったのよっ!!」 僕は固まってしまった。 はじめて聞いた親友の、僕に対する想い。 彼女はうっかり言ってしまったようで、 手で口を押さえ真っ赤になっている。 「閉じ込めた、想い・・・って。」 「と、閉じ込めたんだから今更言うつもりはないわ。」 頑固な彼女の事だ。 本当に言ってはくれないだろう。 だけど、僕はやっとのことでロンの言っていた意味が理解できた。 親友としての立場を守って、その役目だけを果たそうと思っていたこと。 僕とは二人っきりになりたくなかった理由。 分霊箱から現れた、愛し合う僕達の姿を消したくなかった理由。 すべてが一本の糸で繋がった。 「も、もしかして君・・・。」 「・・・・」 「ま、まさかね・・・。」 だけど彼女は・・・ 自分の気持ちを隠してまでも、僕と危険な旅に出掛けてくれた。 いつもいつもその優秀な頭脳で、僕を危険から救ってくれていた。 今、こうしてここにいられるのは。 今、こうして生きていられるのは。 みんな彼女のおかげじゃないか。 そして僕もいつだって彼女の事が心配で・・・。 魔法省の時も、去年ロンとのことで悩んでいる時も 無意識に彼女を守ろうと必死だった。 僕の手はいつだって彼女を離すまいとしていたから、 彼女の手のぬくもりも大きさも、みんな知っている。 簡単なことだった。 どうして今まで気がつかなかったのか。 どうして今まで、これが愛だとわからなかったのか。 それは、僕も彼女と同じだったんだ。 お互い親友という立場に安心しきって、 気付かぬうちに自分の気持ちを閉じ込めてしまっていたのだ。 分霊箱は確かに僕の命を奪おうとしたけれど、 その分大切な事にも気付かせてくれた。 そして、真のグリフィンドール生だけが出せると言う剣で 閉じ込めた想いを解放することができた。 そのきっかけを作ってくれたのは、他ならぬ親友のロンだったけれど。 ロンはずっと前から彼女の気持ちに気付いていたんだ。 「閉じ込めたって言うんなら、そろそろ解放しない?  僕もたった今、気が付いた事がある。  だから君の閉じ込めた想いを、僕にみせて・・・?」 「あなたの気付いた事って・・・」 「これから教えてあげるよ・・・。」 そしてベッドに置いたままだった腕を、そっと彼女の頭の後ろへ伸ばし・・・。 引きつって固まる彼女に口づけると同時に、彼女より先に自分の想いを解放した。 E N D


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なーんてね、なーんてね。
ジニーはどうなるの?とか、ロンはどうなるの?
という突っ込みは、なしでお願いします。
まずは一か所封印!よっしゃーv
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追記:一か所だけの封印で、力尽きた私だったのね・・・(笑)