Her Birthday
気に入らない。 全く…気に入らないよ。 確かに僕なんかと比べて、 彼が格好いいのは誰が見ても一目瞭然だけどさ。 背だってスラッと高くて、 女の子と間違われそうな位綺麗な顔立ちをしてる。 話す内容だってウエットに富んでいて相手を飽きさせないしね。 それに比べて僕なんかチビだし、毛深いし、 話す事なんてせいぜい音楽の事くらいだ。 しかも思い切り趣味に偏った内容だし。 だけどさ・・・、いつもは僕とばっかり一緒にいるくせに、 彼が一緒の撮影の時はずっと彼の所に行きっぱなし・・・って、 一体どういうつもりなんだろう? 「あ、そうだ。そういえば19日って ハーマイオニーの誕生日だったっけ?」 「そうよ。何かお祝いしてくれる?マルフォイ?」 「闇の陣営の僕が、穢れた血の君をお祝いしたとなっては 話がややこしくなるからなあ・・・。」 何が闇の陣営だよ。君はただの釣り好きのトムだろう? 撮影の合間、制服姿のままでエマとトムが 仲良く話している声が聞こえてきた。 大広間のテーブルの上に腰掛けたトムは、 目の前のいすに座っているエマに 優しい眼差しを向けている。 エマも何気なくトムの膝に触れたりなんかして、 誰の目から見てもお似合いだった。 「じゃあさ、9月は僕の誕生日でもあるから、 一緒にお祝いしようか? ハーマイオニー・グレンジャーとトム・フェルトンの 合同バースデー・パーティー。」 「あら、素敵じゃない?」 素敵なもんか! ハーマイオニーはハリーがお祝いするだけで十分だよ。 スリザリンの奴に祝ってもらって、 喜ぶようなハーマイオニーじゃないだろ。 そんな不機嫌な僕を見つけたトムが声をかけてきた。 「あ、おい、ダン!」 「なんだよ?」 「何機嫌悪そうにしてるんだ?」 「別に。」 年上の、しかも俳優としても先輩であるトムに対して 辛辣な態度をとる僕に エマが怪訝そうな顔をしている。 「どうしたの?ダン。」 「だから、別にどうもしやしないよ!」 「何怒ってるの? ねえねえ、今度ハーマイオニーとトムの 誕生日パーティーをしようと思うの。 ダンの都合のいい日はいつ?」 「・・・・。 ハーマイオニーの誕生日だろ? ダンの都合じゃなくてハリーの予定を聞いてくれよ。」 そう言って僕はポケットから眼鏡を出して、それを装着した。 それだけで僕は簡単にハリーになれる。 「ハーマイオニー?僕はいつだって都合はいいよ。 君だって知ってるだろう? それにマルフォイ。どうして君が彼女と話しているのさ。」 トムは僕のそんなセリフに目を丸くして驚いていた。 だけど僕のあからさまな態度を見て、何かを感じたらしく、 急にニヤニヤしだすと・・・、 「なんだ、ポッター。やきもちか?」 と、神経を逆なでするような事を言ってくる。 するとエマまでが面白そうに、 「やだ、ハリー! あなたとマルフォイってそういう関係だったの? 私にやきもちをやいているのね? あらあら、ごめんなさい!じゃ、邪魔者は消えるわね?」 そう言って僕の背中を思いっきりトムの方へと押した。 急に押された僕は、トムに抱きつくような形で 彼の膝の間に倒れこんでしまった。 「エ・・・エマ!!」 するとなぜかトムまでが悪乗りをしてきた。 僕の体をギュッと抱きしめ返してきたんだ。 「ポッター、そうか、そうだったんだ・・・。 僕の事が好きでたまらないんだね? 大丈夫だよ。僕は穢れた血のグレンジャーなんかより、 君のほうがよっぽど好きだよ・・・。」 「ト・・・トム! 悪乗りするんじゃないよ!は・・離せよ!」 隣で面白そうに笑うエマ。 「あら、意外とダンとトムってお似合いなのね? 結構サマになってるわよ?」 「何馬鹿なこと言ってるんだよ!離せよ、トム!」 ところがちっとも僕の体を離しはしないトムが、更に 「じゃあ、もっとお似合いだってとこ見せてあげなくちゃね・・・?」 そう言うと僕の顎をそっとつかんで上を向かせ、 トムは僕の唇にそっとキスをした。 「う・・う・・うわあっっ!!!」 「きゃあ!」 エマと僕の絶叫が同時に響く。 トムは面白そうに笑っている。 僕はビックリするやら恥ずかしいやらで、 尻餅をついた状態で固まってしまった。 エマも腰が抜けたようで、ペタンと床に座り込んでいる。 僕の顔もエマの顔も真っ赤になっていた。 「おいおい、そんなにショックだったのか? ダン?君、免疫ないの?」 何の免疫だよ〜? 男とキスする免疫なんてあるわけないだろ・・・。 「まったく・・。ネットで見たことないのか? ハリーとドラコなんて、 ある一部の人の間じゃキスどころじゃすまないぜ?」 え? キスどころじゃないって・・・? 「知らないのかよ? ・・・じゃあ、どんな事をしているのか教えてやるよ。 エマ!君も後学のために知っておいたほうがいいかもね。 一緒に教えてやるから、今晩付き合えよ。 ついでに誕生日パーティーしようぜ。」 そう言って呆けている僕たちを残してトムは行ってしまった。 その日の夜、僕とエマはトムの車に乗り込んで、 トムの予約したホテルへと向かっていた。 ルームサービスでパーティーの用意も頼むと、 支払いはすべて僕の名前で頼んだと言われてしまった。 「あら、今夜は私とトムの誕生日なんだから当たり前でしょ?」 とエマにまで言われる始末。 「納得できないなあ・・・。 なんでトムとハーマイオニーなんだよ〜。 ハーマイオニーは本の中でちゃんとお祝いしてるだろ?多分・・・」 「一度も私の誕生日の話なんて出てきてないじゃない。 ハリーの誕生日ばっかりだわ。」 ま、いいんだけどさあ。 部屋に入ると既にパーティーの準備は整っていた。 これみんな僕のおごりかよ・・・。 「さて、さっき言ってた事を教えてやらなきゃな?」 トムは自分のノートパソコンを開くと、 慣れた手つきで目的のサイトを開く。 「挿絵もついてるから。 ひっくり返るなよ。 巷じゃ結構有名なサイトらしいから、 それなりに挿絵もリアルだぞ。」 僕とエマは不安げに顔を見合わせる。 そしてそのサイトを開いた状態で、 トムは僕たちの方へパソコンの画面を向けた。 /////////!!! 画面には僕そっくりなハリーと、トムそっくりなマルフォイが その・・・何て言うか・・・・。 い・・・言えないよ。 絶句している僕らをよそに、 平然としているトムが再び画面を自分のほうに向けた。 「次はこれ。」 そして見せられたものは・・・。 今度はエマがひっくり返る番だった。 そこにはさっきとは違って、 僕とエマが濃厚に絡んでいる挿絵が映し出されていた。 リアルすぎる・・・・。 どう見たって僕とエマにしか見えない。 下手な映画のラブシーンを見るよりも、 はるかに刺激的な内容だ。 「ト、トム・・・? どうしてこんなの知ってるの?」 「ご親切に教えてくれる奴がいるんだよ。 この他にも、君とロンだったり、スネイプだったり・・・・、」 「ス!スネイプ〜〜〜!?」 「そんなに驚くことじゃないさ。 ハリーとスネイプなんてもっと多いよ。 それから僕との絡みも少なくない。」 「問題はこの挿絵よりも、小説のほうかな? 読んでみる?」 「ええ・・・。」 読むのかよ!!エマ!! やめときなよ〜〜。 「僕はいい・・・。」 「あら、弱虫ね?いいじゃない。ほんの冗談だわ。」 「だってさあ・・・」 「トム?私・・・ハーマイオニーとハリーのお話が読みたいわ。」 「そうくると思ったよ!」 真っ赤になった僕は、エマの顔を見る・・・。 どうしてハリーと・・・、ハーマイオニー・・・? 「なんで? ハーマイオニーとロンだろ?」 「馬鹿ね。わかんなきゃいいいわよ。 そっちで寝ててちょうだい。」 いや・・・、わからないわけじゃないんだけど・・・。 「どう考えたってハリーとハーマイオニーでしょう? 原作ではなんとなく雲行きが怪しくなってきたから、 私はこっちを原作だと思って、これから愛読させていただくわ。」 「だけど、ひとつ気をつけたほうがいいよ。 これは児童書じゃないから、 本当にさっきみたいな挿絵のような内容の話がごろごろしてる。」 「あら、それが普通なのよ。そっちの方がずっと自然だわ。 原作が不自然なのよ。」 そう言うと僕を無視した二人は、 ずっとパソコンに夢中になっていた。 時々エマがきゃあきゃあ言う声と、 トムが「僕にも読ませろよ」と言って 喧嘩している声が聞こえるだけ。 こりゃ楽しい誕生日になっただろうさ。 僕はなんだかドッと疲れが襲ってきた。 「おっと、こんな時間だ。 僕はこれからガールフレンドと約束があるんだ。 お先に失礼するよ。 エマ、今日は楽しかったよ。 パソコンは明日スタジオのほうにもってきてくれよ。」 「OK,トム。ありがとう。」 「じゃ、くれぐれもパソコンの内容に刺激されるなよ? ま、誰にもわからないけどね。」 そう言うとトムはさっさと出て行ってしまった。 なんか・・・、やばくない? さっきの刺激的な内容の挿絵がまだ脳裏に焼きついてる状態で エマと二人っきりになるのって・・・? 「ハリー?」 「は・・・っはい!」 「何、緊張してるのよ。 ねえ、制服のローブとハリーの眼鏡を持ってきたの。 着てくれる?」 「いいけど・・・、なんで?」 「だから!今日はハーマイオニーの誕生日でしょう? ハーマイオニーはいつもハリーに誕生日を 祝ってもらいたいのよ?」 「え?ロンじゃなくて?」 「同じマグルの中で育ったハリーに、ハーマイオニーが どれだけ親近感を持ってるか、あなたにはわからないの? 本の中ではそんな事全然触れてないけれど、 ハーマイオニーはいつもいつもハリーを頼っていたと思うの。 もちろん精神的にね。 だから、誕生日には二人っきりで過ごして ハリーにおめでとうって言って貰いたいと思うわ。」 そうか・・・。 そうかもね。不安だらけの生活の中では、同じ境遇にいた人間に対して 特別な親近感を持つことは普通にありえることだ。 ハーマイオニーがハリーに対して特別な感情を持つことは、 不思議でもなんでもないんだ。 エマに渡されたローブを羽織って、エマの寝そべるベッドに腰掛けた。 「エマ? 僕もそのハリーとハーマイオニーの話、読んでみようかな。」 「ええ!!読んでみて! 本当に素敵なお話ばかりなのよ。 こっちがよりハーマイオニーの気持ちに近いと思うの。」 多分、こっちの話のハリーのほうが説得力あるわよ?と言うエマに そうなんだろうな・・・と読む前から納得できた。 だってこうしてローブを羽織ると、そばにいるハーマイオニーが 愛しく感じて仕方がないもの。 撮影を離れたところで偶然ハリーになれて、そんな事を感じた。 普通ならハリーはハーマイオニーを好きになるだろうし、 ハーマイオニーもハリーを好きになるはずなんだ。 二人でいろんな話を読んで、それはますます確信へと変わっていった。 「うん・・・。自然だ。 こっちが本当のハリーだよ。」 「そうでしょ?そうなのよ。」 「じゃあ、このシチュエーションの通りに、君におめでとうを 言わなくちゃいけないね?」 「・・・・。」 僕らが選んだハーマイオニーの誕生日にふさわしいシチュエーションって どんな話だったと思う? それをそっくりそのまま真似をして、 ハーマイオニーにとっては素晴らしい誕生日になったはず・・・と、 エマは豪語していた。 そんな誕生日をプレゼントしてくれたトムには、 明日お礼を言わなくちゃ・・・と言うので、 くれぐれもハリーの前ではいちゃいちゃしないように、釘を刺しておいた。 こりゃ明日から休憩時間でも簡単に眼鏡ははずせないな、と思う僕だった。
============================================================== ややこしい話ですみません。 ぱっと思いついた時にはよかったんですが、 書いているうちに訳わかんなくなってきちゃった・・。(汗) ハリハーなのか、ダンエマなのか、はたまたドラハリなのか・・・? 一応ハーマイオニーバースデーSSということで・・・。 Art by JOIE ==============================================================