It reads together

ロンドンにある、とあるホテルの一室・・・。 広いスィートルームのソファに、 ガラスのテーブルを挟んで座っている二人の男女。 先程から30分以上お互いに口を開いていない。 どちらが先に行動に移すのか、腹の探り合いをしている風である。 そして遂に根負けしたのか二人のうちの一人が口を開く。 「こういう場合、男のあなたの方から先にやるべきだと思うの。」 するとその"男のあなた"と呼ばれた一人も話し始めた。 「こういう時、男も女も関係ないだろ?」 「いいえ、関係あるわ。 こういう状況においては大概男の人から行動に移すものだわ。」 するとその男性は大きく溜息をついた。 そして決心したように姿勢を正し、ゆっくりと手を伸ばしてゆく。 反対側に座る女性の胸の鼓動が早くなる。 そして彼の手がある場所に触れる・・・。 「あ・・・」 「覚悟は・・・、いい?」 「・・・え、ええ。いいわよ。」 「そんなに硬くならないでよ。こっちまで緊張するだろ?」 「だって・・・。 久しぶりなんだもの、あなたと一緒にこういう事するのって・・・。」 「じゃあ、止めておく? 又別の機会に・・・」 「いやよ!今夜は覚悟を決めてここまで来たの。 大丈夫。もう後悔はしないわ。思い切ってやってちょうだい、ダン。」 そう、ここにいる一人の男性は、世界一有名な魔法使いを演じている俳優、ダニエル・ラドクリフ。 そして向かい側に座って、彼に事を早く進める様促している女性は、 これまた世界一有名な魔女ハーマイオニー・グレンジャーを演じる、エマ・ワトソンである。 「じゃ、遠慮なくやらせてもらうよ?」 「ええ・・・。」 エマの確認をとると、ダンは一番上に覆われている 薄い透明な衣をゆっくりと剥ぎ取っていく・・・。 「あ・・・、ダン?どうしよう?」 「ちょっと!此処まできて気が変わったなんて言わないでくれよ?  僕もう止められないよ?」 「解ってる。解ってるんだけど・・・」 そんなエマの言葉を無視して、ダンはその衣を思い切り引き裂いた。 「お願い、もっとゆっくり・・・、優しくして?」 「無理なこと言うなよ!もう十分待ったんだから・・・。」 ダンはそう言うと、さっきまでその薄い衣を纏っていたそれを 乱暴にひっくり返し、じっとある部分に目を凝らす。 「あぁ、ダン。いきなりそんなこと・・・。  私堪えられないわ。  どうしてそんなに乱暴な事をするの?  もっとゆっくり確かめ合いましょう?」 その彼女の言葉はほとんど無視された。 ダンはそこからもう目がはなせない様子だった。 「どう?ダン・・・。」 「ちょっと今話しかけないで・・・。」 ダンにそう言われ、エマはそのまま目を閉じると何も話さなくなった。 時々ダンの「あ・・・」とか「うっ・・・」と言う声以外 この広いスィートルームからは聞こえない。 とうとうエマは我慢できなくなって、ゆっくりとダンに声を掛けた。 「もう、話しかけていいかしら・・・?」 「あ?・・・・うん。ごめん、1人で夢中になってたみたいだ・・・。」 「で?どうなの?今あなたは・・・」 「自分で見てみるかい?」 「え?自分で見るの?  いやよ・・・、そんな事できっこないじゃない!」   そして二人は見つめあった。 ダンの瞳からは何も読み取れない。 いつもならダンが何も話さなくても、その表情から大概のことは理解できるエマだったけれど、 今日のダンからは一体何を感じて、何を思っているのか全くわからなかった。 エマ自身も本当は、ダンの表情だけで全てを理解する事は避けたいと思っていたので、 内心ほっとしていたのは事実である。 でもこれは二人で決めた事だった。 いつかこの時が来たら、二人だけで一緒にそれを受け入れようと約束していた。 「エマ、こっちに来て。  さあ、もう一回、今度は僕が声に出して君に聞かせてあげるよ。」 そして夜は更けていった。 二人はこの日オフを利用して、朝まで一緒にいた事になる。 気がつくとカーテンからわずかに日が差し込んでいた。 二人がある事に夢中になりすぎて、朝が来たのも気がつかないでいたと言う事だ。 「ダン・・・。私たち一睡もしてないわ・・・。」 「うん。でも眠くないや。  ちょっとした興奮状態かも・・・。」 「そうね。」 「少し眠ろうか。」 「ええ・・。」 そう言って二人はどちらともなく寄り添い、ベッドの方へ歩いていく。 「シャワー、使う?」 「・・・ううん、どうせすぐ汗をかくから、あとでいいわ・・・。」 「・・・随分大胆な事を言うようになったね・・・?」 「あら、いいのよ?  こんな気持ちのまま眠れるんだったら、先にシャワーを使ってちょうだい?」 「・・・いや。君と同じで無理っぽいや。」 二人はくすくすと笑い合い、ベッドに横たわる。 「あなたと一緒にこの本が読めてよかった・・・。  じゃなきゃ私・・・」 「シーッ、これ以上は今話すのはやめよう。  今はハリーとハーマイオニーじゃないんだから。  本の感想は又あとでね・・・?」 ガラスのテーブルの上には先ほどまで二人で夜通し読んでいた、ハリー・ポッターの7巻。 ダンによって剥がされたビニールは、そのまま床の上に落ちたままだった。 世界一有名な魔法使いを演じる二人は、こうして7巻を読み終えた。 プライベートでは秘密の恋人同士であるだけに、今後のハリーの行く末が 気になって仕方がなかったのである。 だけど今までの流れ上、1人で読む勇気のなかった二人はこうして一緒に7巻を読む事にした。 二人の中でこの結末をどう受け入れ、どう感じたのか・・・? 何年後かこの7巻が映画になった時、二人にこっそり聞いてみたいものである。   ***************************************************************** ダンは自分の誕生日の前に1人でこの本を読み始めたそうですね? 自分が何年後かに演じるハリーの結末を、どうとらえたんでしょうか? 是非本心を聞いてみたいですね? 建前とかじゃなくて・・・、回転さんへのお世辞も抜きで・・・。 ダニエル・ラドクリフとしての感想はどうなんだろう? *****************************************************************