I wish ...


いよいよヴォルデモートとの最後の戦いを控えたある夜の事だ。 僕とハーマイオニーはマクゴナガルに呼ばれ、 ある一つの使われていない教室に来ていた。 そこは僕も来た事のない教室だった。 ただそこには1年生の時に見た事のある、そして2度と探してはいけないと釘を刺された、 あの大きな鏡が置いてあった。 「ハリー、これ…何かしら?」 「これ“みぞの鏡”って言うんだ」 「あなた、どうして知ってるの?」 「うん…、1年の時偶然見つけたんだ。 ダンブルドアからは2度と探してはいけないって言われてたんだけど…。 でもどうして今頃になって、僕達にこれを見せるんだろう…?」 「何をするものなの?」 「これは…、見た人の心の奥の…、自分でも気付かない望みを見せる物らしい…」 「…あなたは…、そこで何を見たの?」 「僕?…僕は自分の家族が見えた。 父さんや母さん、それに今まで会った事もない親戚みたいな人達が見えたよ。」 ここに来る前にマクゴナガルが言っていた事を思い出した。 「ポッター、それからミス・グレンジャー。 今夜ここへ2人で来てもらったのは、ダンブルドアの遺志によるものです。 いつか最後の戦いへ臨む事が出来る日が来たら、 その前にあなたがた2人に、揃ってこの鏡を見せるようにと言われていました。 ポッター、あなたは一度この鏡を覗いた事があるでしょう? ですが今回は前に見た時より長く、そして注意深く見るようにと、 ダンブルドアはおっしゃっておられました。 そして今回、この鏡を2人で見る事で、戦いに1番必要な物が何であるかわかるらしいのです。」 ハーマイオニーはとても興味を持ったらしく、静かに鏡の前へ歩いて行った。 僕も彼女の後に続いて2人で鏡の前に並んで座った。 彼女には一体どんな自分の姿が見えるんだろう? そんな事を考えていると、ふと6年前にロンが見た心の奥の望みのことを思い出した。 「そういえば、ロンは自分がクィディッチのキャプテンになるのが  見えたって言ってたっけ。  しかも首席でだ。」 「うふふ・・・。  ロンらしいわね?」 「君も同じなんじゃないか?  それとも魔法大臣とか・・・?」 「まあ、失礼ね、ハリー。  もう少し夢のある事を言ってくれないかしら?」 「あははは・・・。  だって君の望みって言ったら、ロマンチックには程遠いだろ?    僕は賢者の石の在り処を知りたいって強く思っていたら、  自分のポケットに入っているのが見えたんだ。  そしたら本当に入ってた。  そんな些細な事だよ、人間の望みっていったら・・・。」 「そうね・・・。  そんな物かもね・・・。」 そうして時間は過ぎていった・・・。 僕は又自分の家族に会えるかもしれないと思って、 注意深く鏡を覗き込んでいたが、 この前の時のように父さんも母さんも現れてはくれなかった。 それどころかいつまでたっても、ハーマイオニーと二人で、 こうしている姿しか映っていない。 「ねぇ、何か見えたかい?」 僕は不思議そうな顔をして鏡を見ているハーマイオニーに声を掛けた。 「・・・あなたと二人、こうして並んで座っている姿が見えるわ。」 「じゃあ、僕と同じだ。まだ何も見えてないよ。  父さんも母さんも誰も映っていない・・・。」 さらに時間が過ぎていった・・・。 「・・・ねぇ、この鏡本当にあの時のみぞの鏡なのかなあ?  随分と時間が経ったけど、さっきから何も変わってないよ。」 少し不機嫌になって、僕はハーマイオニーの方を見た。 すると驚いたことに、彼女は鏡を見ながら微笑んでいる。 「君には何が見えるんだい?」 「だから・・・あなたと並んで座っている姿よ?」 「だろ?これみぞの鏡じゃないよ、きっと。」 「ハリー、あなたマクゴナガルの言った事・・・忘れたの?」 「以前の時よりも、もっと長く注意深くこれを見なさいって仰ったじゃない。」 「もう十分長い時間見てるよ。  注意深くって言ったって、何も変わらないんじゃ注意しようが無いだろ?」 「ハリー?あなたには分からないの?  2人で一緒にこの鏡を見ているのにも拘らず、映し出すものは1つなのよ?    これがマクゴナガル先生の仰っていた事の答えなのよ?」 「どうしてこれが、鏡の映し出している答えだって分かるんだい?  何も変わっていないんじゃ、ただの鏡だって事もあるだろう?」 僕のイライラした言葉にハーマイオニーは一つ深い溜息をつくと 僕達の映っている鏡の中心を指差した。 「・・・あれが、見えない?」 「あれ・・・って?」 僕はハーマイオニーの指差す場所に顔を近づけて、そこを念入りに観察した。 「・・・あっ!」 「気がついたみたいね?ハリー。」 「で、でも・・・。」 「ダンブルドアはお見通しだったのよ。  私達が一緒にこの鏡を覗いても、見るものは一つだって・・・。  今、私達の望んでいることは2人同じ事だって・・・。」 マクゴナガルが注意深くこれを見ろと言った訳がはじめて分かった。 何の変化もないと思っていた鏡だったけれど、 よくよく見てみれば、僕とハーマイオニーのローブの袖が重なり合ったところで・・・ ・・・2人の手はしっかりと繋がれていたんだ・・・。   ======== 又々よくある話でごめんなさい。 一見何も変わってないように見えて、 実は心の奥ではお互いしっかりと必要としている・・・。 無自覚ハリハーは萌えの原点です。 ========