LESSON 4
ハリーと初めてキスを交わした日から2週間が過ぎた。 あれから何となく顔を合わすのが恥ずかしくて、 どことなくお互いよそよそしい態度で接していた。 悪いのは私の方・・・。 ハリーは前以て私に警告を発してくれていたのに… それでも構わないって、自分からその警告を無視して彼の胸に飛び込んで行ったはずなのに… 私って酷い人間だわ… 一人自己嫌悪に陥っていると、突然ジニーから声をかけられた。 「ハーマイオニー、ちょっといい?」 「え?あ…、うん、いいわよ?なあに?」 少しだけバツが悪かった。 ついこの間彼女の恋人と、一線を越えそうになったんだから。 しかも誘ったのは自分の方なのだ。 もしかしてその事を責めにきたのかしら…? 「あのね、実はハリーの事なの」 あぁ、やっぱり…。 …でもあの日の事は秘密にしようって、ハリーと約束したんだったわ。 ハリーがわざわざジニーを傷つける事を言うはずないし…。 私は用心深くジニーの話し出すのを待った。 「あのね、最近ハリーがおかしいの。」 「え?そう?いつもと変わらない気がするけど…」 「ううん!絶対おかしいよ! ハーマイオニー、何か聞いてない?」 聞くも何も、あれからハリーとはまともに口をきいていなかった。 だからあの日からハリーがジニーに対してどう変わったかなんて、私が知るはずもない。 「何も聞いてないわよ? でも、どんな風におかしいの?」 「あのね、キスもしてくれなくなっちゃったの…。 ねぇ、ハーマイオニー?私何かハリーを怒らせる事したのかなあ?」 「キ、キスも…って…」 ジニーは泣きそうな顔で話し続けた。 「ううん、前からそうだったの。談話室でみんなの前でキスした時だけ...。 ハリーの方からはちっとも近づいてこないのよ。 私からキスしてってお願いすれば、それに応えてくれるけど... でも、すぐ離れて行っちゃうの…。 私は彼にとって恋人じゃないのよ…。」 「でも、あなたは好きなんでしょう? ハリーは少しだけ奥手なのよ。焦らず待ってあげたら?」 「でも…、いつまでも恋人として見てもらえないのに、待ってるなんて私間抜けだわ。」 「ジニー。キスしたり抱き合ったりするだけが恋人じゃないわ。 あなたは恋人としてのハリーに、何を求めているの?」 「だって、マイケルやディーンはいつも私を求めてきてくれたわ。 一緒にいて愛しいと思えば、自然とキスしたくなるし、抱きしめたくもなるって言ってくれた。 でもハリーは違う。私がキスしてって言うと、とても困った顔をするもの…」 「照れてるのよ。だってそんな時ばかりじゃないでしょ? ちゃーんと彼の胸のTATTOO の事、知っていたじゃない!」 「あれは…、あれは冗談で言っただけよ。 胸のTATTOOどころか、彼のパジャマの色さえ知らないわ…」 「う、うそ…」 「うそじゃない!ハリーはそんな時間に私を呼び出す事なんてしないもの。」 じゃあハリーは本当の事を言ってたんだ。 …あ、あんな事をしたのは私が初めてだって…。 だけどどうして私には出来て、ジニーには出来ないんだろう。 「わかったわ。近いうちにハリーからも話しを聞いてみるわ。 一つ確認するけど、あなたはハリーにどうしてもらいたいの?」 「・・・恋人として、愛してもらいたい・・・」 「そう…。わかったわ。」 「ありがと、ハーマイオニー」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ハーマイオニーとキスしてから、何かが僕の中で変わった気がしていた。 ハーマイオニーを正面から見ることが出来なくなっていた。 彼女を見ると、あの時の感情が再び戻ってきて、何とも言えない気持ちになる。 胸の中で渦巻く感情が何なのか、僕にはわからなかった。 ただ、一つだけ自分で分かっている事は、もう一度彼女を抱きしめたいという事。 「ハリー、話があるの。」 ハーマイオニーだった。 久しぶりに彼女を近くで見た。 又あの時の感情が胸に込み上げてくる・・・。 「やあ、ハーマイオニー。何?」 動揺を隠すため、なるべく普段どおりに応えてみる。 「ここじゃなくて、どこか別の場所で...。 中庭にいきましょう。いいかしら?」 「あ..あぁ、いいよ。じゃ、ちょっとマントを取ってくる。 ここで待っててくれる?」 「ええ、わかったわ。」 僕は急いでマントを羽織ると、談話室に降りた。 「あれ?ハーマイオニーは?」 「今さっき出て行ったよ。ハリーはどこに行くんだい?こんな時間に。 あ、ジニーとデートか! おい、僕の大切な妹に変な事するなよ!?」 「変な事って何だよ、ロン。」 「健全な青少年が考える事さ!」 「・・・じゃ、思いっきり心配した方がいいかもね?」 僕はロンの冗談を(いや、彼にとっては冗談じゃないかもしれないけど) 軽く受け流すと談話室の扉を潜り抜けた。 そこにはハーマイオニーが立っていた。 「そこにいたんだ。」 「ええ。だってこんな時間にハリーと二人で外に出るのをみんなが見たら 変に誤解する人がいるかもしれないでしょう?」 「僕と誤解されるのいやなんだ・・・」 「あなた、自分の立場を分かってる? 私はいいけど、あなたにはジニーがいるのよ?」 又ジニーか・・・。 どうしてみんな僕の顔を見ると”ジニー、ジニー”って言うんだ? 「ジニーがいると僕は君と夜の散歩も出来ないのかい? だったら、いらないよ! ロンもそうだ。こんな時間に出掛けるのはジニーとデートすると思ってる。 僕は君と一緒の時間も大切なんだよ。 あの日からほとんど口をきいていなかったし・・・。 本当はとっても話がしたかったんだ。 それもジニーに気を使って出来ないって言うんなら、 僕はジニーと別れるよ。」 「そうね、ハリー。ごめんなさい。 でも今日あなたを呼び出したのは、ジニーに頼まれた事があったからなの。 あなたが、ジニーを恋人として愛しているかどうか、聞いてほしいって・・・」 「・・・君が僕と話したくて、声を掛けてくれたんじゃなかったの?」 「・・・」 「2週間前、君にあんな事をしちゃって、ずっと考えてたんだ。 怒らせちゃったかもしれない・・・傷つけちゃったかもしれない・・・って。 ジニーとのあんな事を相談した僕も馬鹿だったし、後悔もしてる。 そんな時に君は、ジニーをどう思ってるのか聞きにきたっていうのかい?」 なぜか腹が立って仕方なかった。 ハーマイオニーが僕達二人のことで話がしたいんじゃなくて、 ジニーをどう思うか聞きに来たっていうのが嫌だった。 そんな腹を立てている僕に負けず劣らず、ハーマイオニーまで怒り出した。 顔を真っ赤にして、目に涙まで浮かべている。 「何勝手なこと言ってんのよ! この間私を呼び出したのはなぜ? ジニーとの事を相談したかったからでしょう!? 私とキスしたことで、その事はどうでもよくなっちゃったってわけ?」 「・・・」 「自分勝手よね?私の事より、まずジニーの方を心配するのが本当なのよ!! そんな事もわからないで、私を責めないで!」 怒られているのに・・・ハーマイオニーに怒られていることが・・・心地いい。 僕、やっぱりおかしいんだ。興奮して涙を流しながら力説している彼女が 可愛くて可愛くて仕方なかった。 ”あとは本能の赴くままよ!” あの時の彼女のセリフを思い出す。 そうか・・・本能のままね・・・ 僕はハーマイオニーをいきなり抱きしめると、その唇にキスをした。 あ...又変な気持ちになってきた・・・ バシッ!! 「いってぇ〜!!」 僕に思いっきり平手打ちをくらわしたハーマイオニーは そのまま僕を残して去っていってしまったんだ。 まだ続くのぉ〜? LESSON 5へ →
======== あんまり長いので、二つに分けようと思ったんですが、 甘くも無いお話を2回も続けるのはちと申し訳ないと思い 思い切って1話として載せました。 ハリー君は最早、ハーの前では自分を制御できなくなっちゃってますね〜。 それは愛があるからとは気付いていない、大ボケハリーなのでした。 彼の苦難は続きます。(えっ!?) ========