Thanks your heart
僕の事をいつもいつも心配してくれて、ヴォルデモートとの戦いの為に 様々な智恵を出し勇気付けてくれる存在・・・ そう、それは僕の親友の一人、ハーマイオニー・グレンジャー。 学年一の頭脳をもって僕の為に寸暇を惜しまず、色々な策を練ってくれる。 それは今に始まった事じゃなく、三校対抗試合の時も 夜遅くまで僕に付き合って僕が優勝する為に導いてくれた。 彼女には言葉では言い尽くせない程感謝していたし、 彼女の存在無くして今の僕は有り得ないとさえ思っている。 確かにそう思っている。 いるけれど・・・ 日々ヴォルデモートと戦う事を考えなくてはならない僕にとって、 それは段々負担になってきていた。 アンブリッジと魔法省に対抗していた5年生の頃から、 それは強く感じる様になっていた。 ハーマイオニーといると、その事ばかりを考えざるを得ない。 彼女の事は大好きだったし、心から信じていたけれど・・・ 堪らなかった。 だから、ジニーに逃げたんだ。 ジニーはハーマイオニーほどヴォルデモートとの事を話題にする事はなかった。 それがとても有り難かったし、僕にとっては凄く気が楽だったんだ。 「ハリー、ロンたら早くハーマイオニーに自分の気持ちを打ち明ければいいと思わない? そうすればロンだって、私達の事をとやかく言わなくなるに決まってるもの。」 「ハーマイオニーは何て返事をするかなあ?」 「あら、二人は絶対相思相愛よ!見ててわからないの?」 「いや、わかるけど…、今はそういうの、どうかと思うんだよね…」 「どういう意味?」 「だって、これから益々暗くて不安な日が続くかもしれないんだよ? そんな時に好きだ嫌いだって言ってられるかなあ?」 「そんな日がくるかも知れないから、余計大切なんじゃない! 誰だって心の支えは必要よ?」 「僕は…、僕は君の支えになってるの?」 「当たり前でしょ?あなたならきっとこの魔法界を救ってくれるって信じてるもの!」 魔法界を救う…? いや、そういう意味じゃなくて…。 「君個人として、僕は必要なの?」 「当たり前じゃない!? ハリー、覚えてないの? 私はあなたが1年生の時から、あなたに憧れていたのよ?」 憧れかあ… 僕の聞きたい言葉はそこにはなかった。 別に愛してるとか、好きだとかそんな言葉を聞きたかったわけじゃないけど、 何だかそれって本当に僕自身を想ってくれてるのとは・・・ ・・・どこか違う様な気がしたんだ。 そんなある日の事、いつもと同じ様にジニーと二人きりで湖の辺でデートをしていた。 するとそこから少し離れた場所でロンとハーマイオニーが話しているのが見えた。 「うふふ…、ロンたらやっとハーマイオニーに気持ちを打ち明ける気になったみたいね? ハリー、ちょっと行ってみましょうよ…」 「ち…ちょっとジニー!やめなよ!二人に悪いだろ?」 「あら大丈夫よ。さ、行くわよ!」 どうして? どうしてほっとけないんだ? だいたい悪趣味だろ、人の話を盗み聞くなんて…! そんな僕の気持ちを無視して、ジニーはどんどん二人に近付いて行く…。 いやでも二人の会話が聞きとれる場所まで来てしまった。 「あなたの気持ちはとっても嬉しいわ。 きっと私もあなたの事を好きだと思うの。 ・・・でも・・・」 「・・・ハリーだろ?」 突然二人の会話の中に僕の名前が出て驚いた。 どこから見てもロンがハーマイオニーに気持ちを打ち明けている様だった。 二人の間の気持ちの変化には、鈍感な僕でさえ気付いていたし、 ましてや聡明なハーマイオニーの事だ。ロンの気持ちに気付かなかったわけはない。 だけどこの様子じゃ、あんまりうまくいきそうな感じがしなかった。 どうして・・・?ハーマイオニーだってロンが好きなはずなのに・・・ 「ヴォルデモートとの戦いが終わって、 ハリーの使命が無事終わることができたら・・・ その時は私、あなたの気持ちを喜んで受け入れるわ。 でも、今はまだそんな気持ちになれないの・・・。 今は3人じゃなければいけないと思うのよ。」 「だって!ハリーだってジニーといるじゃないか!? ハリーはよくて、どうして僕達はダメなんだよ?」 「ハリーには心の安らぐ場所が必要なのよ。 予言の事なんて一切考えなくてもいい時間が必要なの。 それが今はジニーと一緒にいる時間なのよ!」 「・・・君はいつもハリーの事が一番なんだな・・・」 「ロン!!」 「ハリーだってそうだよ。ジニーとはうまくいってるみたいだけど、 ハリーが本当に必要としてるのは・・・君一人だと思う。 あいつは気付いてないだろうけどね。 多分無意識に僕達に遠慮してるんだ。」 「そんな事ないよ!ロン!!」 僕はたまらず飛び出していた。 「「ハリー!?」」 「何言ってんだよ、ロン。僕は君達には幸せになって貰いたいんだ。 本当ならヴォルデモートの事だって、僕一人でやればいい事なんだ。 巻き込んでしまって本当にすまないと思ってる。 ロン、ハーマイオニーを幸せにしてやってくれよ。 ハーマイオニーもロンとなら幸せになれるよ!」 「巻き込んだなんて言わないで! いつ、私達が巻き込まれたなんて言った? 私やロンの幸せを考えてくれるのは嬉しいけど、 あなたにだって幸せになる権利はあるのよ!?」 「僕の幸せは君が幸せになることだよ。 戦いの事なんて考えなくてもいい所で、 笑って暮らして貰うことが僕の一番の望みだ。 ロンのことが好きなんだろ? だったら難しい事じゃない。」 「答えは出たわね・・・ハリー。」 今まで黙って成り行きを見ていたジニーが口を開いた。 「いえ、もうとっくに分かっていた事なのかもしれないわ。 自覚のないのは本人だけだったようよ、ロン?」 「・・・」 「ライバル出現ね?」 「いや、ハリーじゃ勝ち目はないよ。 彼女もさっき、はっきり認めたからね。」 「二人で何言ってんだよ?」 「そうよ。認めたって何を認めたっていうの?」 「ハリーが例のあの人に勝ったら教えてやるよ。 でも、きっとその前に気付くだろうけどね。」 そうして、ロンとジニーは僕達をそこに置き去りにしてい行ってしまった。 「・・・ハリー?」 「ごめんね、ハーマイオニー。君達の邪魔をするつもりはなかったんだけど、 あんまりロンが勝手なこと言ってるもんだから・・・」 「いつから聞いてたの?」 「・・・忘れちゃったよ。 だけど・・あの二人何を言ってたんだろう? 自覚って・・・何の自覚だろう?」 「わからないわ。」 「でも、どうしてロンの気持ちに、あの時応えてあげなかったんだよ? 君もロンのこと好きなんだろ?」 「今はそれどころじゃないわ。いつかこの魔法界が平和になった時、 まだロンが私のことを想ってくれていたらその時考えるわよ。」 「・・・そう言うと思った・・・」 「そう?」 「ごめんね、僕のせいで・・・。 僕に関わらなきゃ、あのままロンと幸せになれたのに。」 「私の幸せはそれだけじゃないわ。 戦いが終わって、私の事を好きって言ってくれる人がいなかったら、 その時はハリー、あなたに責任とってもらうから心配してないわよ?」 「じゃその時は面倒見るよ。」 そして二人で笑った。 これから先、やっぱり彼女の事を疎ましく感じる事はあると思う。 だけど、こうやって戦いの事を何もかも曝け出しながら話せるのも、彼女しかいないんだ。 それを理解してくれるのも彼女しかいない。 僕はこの時、他の女の子と過ごす時間が安らぎなんかではなくて、 ただの気休めでしかないって事に気がついたんだ。 今度ジニーに会ったら真っ先に言わなくちゃいけない言葉を、 僕は何度も心の中でシュミレーションしていた・・・ ======== そうよ、ハリー。チョウもジニーも気休めだったのよ! よく周りを見て御覧なさい。 あなたを一番心配して、自制心を失うくらい翻弄しているのはだ・あ・れ? ========