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A coincidence

クィディッチの練習で、僕はうっかり箒から落ちて左手首を捻挫した。 マダム・ポンフリーに手当てをしてもらうため、夕食もとらずに医務室に来ていた。 「あら、ポッター、今日はどんな怪我かしら?」 1年の頃からほぼ毎シーズン、ポンフリーにはお世話になっている。 口はうるさいけれど、腕は一流だ。明日には痛みもなくなっているだろう。 ポンフリーにお礼を言って、医務室を出ようと扉に手を掛けた時だった。 僕の目の前に、左手首を庇う様に立つハーマイオニーが現れた。 「ハーマイオニー?」 「ハリー!どうしたの?具合でも悪いの?」 「君こそどうしたんだい?・・・あ、怪我したの?」 「ううん、たいしたことないの。ちょっと手首を捻っちゃって…」 「おやおや、今度はポッターのお友達ですか?仲のいいのも結構だけど、同じ怪我をしなくてもいいんじゃない?」 僕の左手に巻いた白い包帯を見て、ハーマイオニーは心配そうな顔をした。 相変わらず自分の事は二の次なんだから…。 「僕より君は大丈夫なの?随分顔色が悪いけど?」 「大丈夫よ。怪我に慣れてないから少し気分が悪いだけなの。  少し休んでから寮に戻るわ。」 「じゃ、僕も付き合うよ。」 「あらあら、本当に仲がいいのね?」 こうしてしばらくの間、二人の手首には白い包帯が巻かれていた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ それから一ヶ月も経たないある日の事・・・。 僕とハーマイオニーは再びマダム・ポンフリーの世話になっていた。 今度はなんと二人揃って、右の足首の骨折だった。 動く階段を二人揃って踏み外したからだ。 「手首の包帯がやっとはずれたと思ったら、今度は松葉杖かい?」 「うるさいよ、ロン。君を庇っての名誉の負傷だろ?  もう少し労われよ。」 「そうよ。さあ、私とハリーの教科書を持ってちょうだい。」 「はいはい、わかったよ。」 いつも一緒にいる僕達が、なぜか一緒に松葉杖をついてひょこひょこ移動している。 周りから見ればずいぶんと滑稽な姿だったと思う。 時々振り返っては、「仲がいいねえ・・」とひやかされたり、口笛を吹かれたりしていた。 冷やかされることは何とも思わなかったけれど、2度あることは3度ある...って言うじゃないか。 ハーマイオニーと二人で、「少し慎重に行動しよう!」と約束した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ やっと足首も元に戻り、普段どおりの生活を送れるようになった。 クィディッチの練習も僕がいなかった期間は中止していたので、かなりハードな練習の日が続いていた。 そんなある日の事、かなり白熱した練習の中で、フレッドの打ったブラッッジャーが僕の背中を強打した。 その勢いで箒から放り出された僕は、そのまま2メートル下に落下してしまった。 幸い大した高さじゃなかったのと、落ちた所が芝生の柔らかい所だったので、頬にかすり傷を負うだけで済んだ。 「お~い、大丈夫かハリー!!」 「いててて・・。多分大丈夫!・・・・・あっ、大丈夫じゃないかもしれない!!」 そう言うと僕は一目散に駆け出した。 クィディッチのユニフォームを着たまま、顔から血を流して、グリフィンドールの談話室まで...。 バンっ!! 物凄い勢いで扉を潜ったので、談話室にいる全員が驚いて僕を見た。 「何があった?ハリー!?」 「ロン、ハーマイオニーは?」 「・・・目の前・・」 ロンが顎で指す所には、これまたびっくりした顔をしたハーマイオニーが本を片手に僕を見上げていた。 「ハリー、ど、どうしたの?  何かとっても大変な事が起こったって顔よ?その様子だと・・・」 「あ・・・いや、大丈夫?ハーマイオニー?」 「それは私からあなたに聞いてもいいかしら?」 普段と何ら変わらないハーマイオニーがそこにいた。 「ハ~ァ!よかったぁ!」 僕は安心して、ドサッとソファに腰を下ろした。 顔の擦り傷がひりひりして、自分は怪我をしている事を思い出した。 「さ~てと、ちょっと医務室に行って来るよ。」 「おいおい、説明なしかよ?  コリンなんてあっちで椅子ごとひっくり返っちゃったぜ!」 ロンの言葉には何も答えずに、僕は静かに談話室を出て、医務室へと向かった。 「ちょっと、ハリー!ハリー!」 「あ、ハーマイオニーか。何か用?」 「用があるから、追いかけてきたんじゃない!  ちょっとさっきはどうしたの?それに怪我は大丈夫?」 「うん、・・・つまりそういうこと。」 「どういうこと?わからないわ。」 「いや、僕と君、最近いつも一緒に怪我してただろ?  さっき箒から落ちた時、とっさに君の事が心配になってさ・・。  またどこかで怪我してるんじゃないかな・・・って。  でも何ともないようだ。よかったよ。」 「そんな事で、あんなに一生懸命走ってきたくれたの?」 「そんな事じゃないよ。僕にとっては一大事さ。」 彼女をチラッと覗き見ると、はにかんだ様な顔で嬉しそうに微笑んだ。 その顔がとっても可愛くて、僕も自然と笑顔になった。 マダム・ポンフリーは生憎と不在だった。 「ハリー、ここに座って。  お礼に私が手当てをしてあげるわね?」 「大丈夫かなあ?余計にひどくなったりしない?」 「まあ、失礼な人ね。大丈夫よ、やってみるから・・・」 「やってみる・・・って、君・・やった事ないの?」 「簡単よ!この間ポンフリーがやるのを見てたから!」 ますます不安になったけど、ここは彼女の言う通り素直に椅子に腰掛けた。 消毒はちょっとしみたけど、慣れない手つきで一生懸命手当てをしてくれる彼女を見ているのは なかなか楽しかったし、気持ちがとても和らいだ。 「いたっ!!」 「どうした?ハーマイオニー!?」 見ると柔らかいガーゼを切ろうとして、うっかり自分の指を切ってしまったようだ。 左の中指が赤くそまっている。 「もう!やっぱり自分でやるよ。大丈夫?ほら、僕にかしてごらん」 僕に絆創膏を巻いて貰いながら、彼女はくすくす笑って言った。 「ふふふっ・・・。やっぱりシンクロしてるみたいよ。あなたと私って・・・。」 「・・・ホントだ。参っちゃうなあ・・・」 「でもハリーとだったら悪くないかもね?」 「え?それは困るよ。これ以上心配事増えるのは・・・」 照れ隠しでそんな事を言ってしまったけれど、本当は僕もまんざらじゃなかったんだ。 優しい彼女の表情と、医務室に入り込む西日が心地いい・・・。 ”ハーマイオニーとなら気持ちと心がシンクロしているだけで十分だよ” このセリフは僕の心の中だけでつぶやいてみた・・・。 ======== 中学の時、好きな人と同じ時期に2人で松葉杖をついて生活していた事がありました。 生活自体は大変で、友達にもいっぱい迷惑かけちゃったけど、 実はこの偶然が私にとって、ちょっぴり嬉しかったりもしたもんです。 ========